どうなる「ツルハ」と「クスリのアオキ」 イオンの出資先で問われるガバナンスと再編の予兆
気になるイオンの対応は?
リリースでの表明をどう読めばよいか
そこで気になるのがイオンの対応です。
8月1日、イオンはツルハの事案について、会社側(ツルハのこと)提案を支持するリリースを行いました。これによれば(一部抜粋すると)
- ドラッグストア業界における再編の必要性、有効性は広く認知されており、特に大手同士の再編の重要性や、地方のドラッグストアの再編の重要性は、当社も認識している
- 「誰もがヘルス&ウエルネスのサービスを等しく受けられる社会の実現」を目指しており(途中略)ドラッグストア業界における各企業間の連携、協力が一層必要となってくると思料(編集部注:思いはかること)
- これまでのツルハと当社との資本業務提携に基づく良好な関係を維持・強化し、当社とツルハとで共に社会課題を解決していくことが重要であると考えており、今後これについて、ツルハと真摯に協議を行っていきたい
と述べられています。
イオンがわざわざこのようなリリースを出す必要があるのか分かりかねます。あえていえば、持分法適用会社化ないし連結子会社化の検討を開始するニュアンスを行間で伝え、会社(ツルハ)提案の多数派工作を側面支援しているとみるのが自然でしょう。
とはいえ、イオンがツルハの株主持分を単純に引き上げるだけでは、「再編の重要性」を「認識している」という上記の説明に対して不十分だと考えます。イオンは同社の株主に対する説明責任を果たすためにも、ウエルシアホールディングスを絡めた抜本的な再編を通じて経営効率を高めるという青写真を用意すべきだと思います。イオンは、長年の最重要課題であったGMS(総合スーパー)・SM(食品スーパー)・DS(ディスカウントストア)の採算改善に一定の目処をつけ財務体力も向上していますので、親子上場の整理に関する指針を示す時期が来たのだと思います。
とはいえ、
マツキヨココカラ&カンパニーが統合効果を着実に生んで収益力を引き上げている姿を目の当たりにして、ドラッグストア各社は業界再編の必要性、業界再編における主導権の必要性を強く意識しているはずです。さらに、業界再編の主導役を期待されるイオン側も低採算事業の改善を進めグループ再編を開始する余裕が生まれています。イオン出資のツルハ・クスリのアオキ2社に対するアクティビストの要求はよく練られた絶妙のタイミングで出てきたと思います。この2社の株主総会に大いに注目すべきでしょう。
再編が期待されるホームセンター業界も、この事案の推移を固唾を飲んで見守っているのではないでしょうか。
プロフィール
椎名則夫(しいな・のりお)
都市銀行で証券運用・融資に従事したのち、
米系証券会社のリスク管理部門(株式・クレジット等)を経て、
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