ハニーズ復活の理由と高収益を支える、真似できない「生産の秘密」とは
ハニーズが高収益な理由は意外なところにある!
私は、10年以上前から江尻英介社長を良く存じ上げている。コンサルタントとして、同社に提案書をもってゆくたび、父親で元社長の江尻義久会長に、「シュレッダー送り」にされてきた。最後のページの「コンサルティングフィー」に目を移すや否や、である。
私たちコンサルは、例えば「20億円も在庫償却をしているなら、1億円を払ってくれれば在庫償却ロスを半分にできるのに」と計算する。一方でコンサルの価値を容認しない人達は、コンサルティングフィーを人件費と勘違いし、「なぜ、3人の人間に数千万円も払わないといけないのだ」と考える。当たり前だが、コンサルティングファームとて、バックオフィスはあるし、会議室もある。人材派遣ではなく、B2Bの取引なのだ。
ちなみに別の企業の話だが、1000億円以上あった不良在庫を20億円まで減らしたこともあり、この企業はもともと成果報酬にしてくれと言っていたが、本当に成果報酬フィーとして数百億円も払ったのか、今でも疑問だ
次にM&A(合併・買収)について。ハニーズはM&Aの経験がなく、得意ではないだろう。以下はハニーズの話ではないが、一般的にM&A嫌いの会社が陥りがちな例だ。
基本的に、優良企業をM&Aする場合、バランスシートを拡大させる一方で、損益計算書にはプラスのインパクトしかない。それなのに、例えば「300億円出せば買えますよ」というと「300億円も出せるか!」と怒る。買収相手は優良企業なので、いわゆる「バリュエーションが大きくなる」わけだが、バランスシート上はグループの資産が増えるだけで、損益ベースで大きく黒字が出ている会社なので、連結ベースでは必ず売上・利益成長するのである。
「当社には十分な現金があります」というのは「経営の安定性」をアピールしているつもりだろうが、投資家、特に外国人投資家からしてみれば、「投資先がわかりません。だから溜め込んでいます」といっているのと同じ。やがて外資のファンドから「不要な現金は株主に還元せよ」と主張されて、取り上げられる運命にあるのだ。もちろん、この話はハニーズのことではないが、まさにM&Aやデジタルに対する不理解がもたらす弊害であり、コンサルとして私が常に経営者に対して説明するときに苦労するポイントなのだ。
閑話休題。改めてになるが、それでは、ハニーズの低コストはどこからでてくるのか。
まず、原価(率)というのは「企画原価率」+ 「オフ率」+ 「評価減+評価損」で構成され、この3つを下げることで初めて原価が下がる。
これは、ファイナンスというより四則演算の算数である。ここからわかることは、「値引きをせず、仕入れた商品をすべて売り切る」ことができれば、企画原価率の逆数が粗利となり、企業に莫大な利益をもたらす。ファッション感度の高い都市型アパレルと異なり、ハニーズは、郊外で40〜50代の女性に向けてコストパフォーマンスの高いアパレル を企画生産、販売する店舗ビジネスを展開している。
私は、江尻社長が専務だったとき、彼と幾度も話をしたので同社の強みがよく分かる。ハニーズは、当期に売れなかった商品は翌期に再プレスをして定価で再販売する。例えば冬物の重衣料なども3月、4月でも値引きはあまりせずによく売れている。また、当期に残った商品を翌期に再プレスで販売すればキャッシュフローは悪化する(在庫を叩き売って現金化するのと比べれば)が、損益計算書は良化する。
これが都会になると、女性の流行に対する目が厳しくなり、「あれは昨年も売っていた」と目もくれられず、結果、企業は損失処理をすることになる。
例えばユニクロの場合、商品をベーシックにすることで損失処理を避けている。ハニーズは販売エリアを武器に、それ(値引きをしない、売れ残さない)を実現しているわけだ。したがって、ハニーズ復活の理由は「EC比率が低かったため、リアル店舗が苦戦していたコロナ禍が過ぎ、人流が回復したから売上が回復した」というのが、私の分析だ。
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