7社の「勝ち」フォーマットを徹底検証!インフレでも強いスーパーマーケットの条件とは
インフレという新たな逆風
「(業績の)外見上の数字はいいが、本質的な問題が見えにくくなっている。いずれ再び、実力勝負の世界になる」──。
コロナ禍真っただ中、食品スーパー(SM)が巣ごもり需要をとらえて特需に沸いていたなか、ある大手SM企業の経営トップはこう危機感をあらわにしていた。少子高齢化と人口減少、慢性的ともいえる景況感の悪化、人手不足の問題、ボーダレスな競争の激化──。一過性のコロナ特需はSMを取り巻くこれらの問題を解決してくれるわけではなく、コロナ後には再度、各社が同じような課題に直面するというわけだ。
それから約3年。われわれが想定していた以上に長期化したコロナ禍だが、ついに日本政府は、5月に新型コロナウイルスを季節性インフルエンザと同等の「5類」に移行することを決定(本稿執筆時点)。諸外国に比べてコロナ関連の規制の緩和・撤廃に慎重な姿勢を見せてきた日本も、ついにコロナ収束を現実のものとして動き始めている。
ただ、冒頭の経営トップの言葉どおり、あるいはその想定を超えて、SMを取り巻く環境は厳しい様相を呈している。なかでも“想定外”だったのは、コストプッシュ型インフレの加速だ。長引く円安や、ロシアのウクライナ侵攻といった世界情勢に起因する生産コストの上昇により、物価は高騰。2022年度の国内の消費者物価指数(天候要因による相場変動が大きい生鮮食品を除く)は、前年度から3.0%増となり、1981年度以来41年ぶりの高水準を記録した。直近でも、2023年3月消費者物価指数は前年同月から3.1%上昇、さらに食料品(生鮮食品を除く)に至っては同8.2%増と約40年ぶりの高水準となっている。
あらゆるモノの値段が上がるなか、食品購入にかかる支出を抑えるべく購入点数を減らしたり、SMへの来店頻度そのものを減らしたりといった購買行動をとる消費者も少なくない。SMにとって、水道光熱費や出店・賃料コストの上昇とともに、こうしたインフレ下での消費者の生活防衛意識の高まりは深刻な問題である。ただでさえ、コロナ特需の反動もあって売上が低迷している企業もあるなか、お客が「店に来てくれない」「モノを買ってくれない」という新たな逆風がSM業界を襲っているのだ。
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