2022年、株価が10%以上上昇/下落した小売業と2023年に注目すべき3つのテーマとは
2023年の小売業を取り巻く3つのテーマとは
次に、2023年の予想、というよりも筆者の注目点をご紹介させてください。
日銀が長短金利操作に柔軟性をもたせたことで円安一辺倒になる可能性は低下したと思います。また原油価格は高止まりこそすれ、欧米が景気抑制に向かっていることから、一方向に上がっていくとは考えにくいと思います。つまり輸入依存型の日本の小売業にとって逆風は弱まると思います。
そこで第一は、復活劇の有無。
外部環境が落ち着くのであれば、ニトリホールディングス、良品計画、あるいはセリアの経営陣の真の実力が問われるはずです。
第二は合従連衡。
前回、Eコマース・広告・決済を束ねる楽天やZホールディングスなどの企業がどのようにリアルの小売事業者と組んでいくのかが試される時期が近づいたと述べました。ただ、リアルの小売事業者の観点から見ると、こうした連携は収益基盤の補強にはなるにしても、それを超える劇的な競争力強化にはなりにくいと思います。
となると、毎度のことになりますが、いまだ十分集約の進んでいないホームセンターやドラッグストア業態の集約を予想せざるを得ません。いち早く大型M&Aを成立させたマツキヨココカラはライバルからどう見えているのでしょうか。
また、業界集約が予想されるなか、自社のポジションを高めるためには株価を高めておくことが必須です。先日、ジョイフル本田の中期計画について述べさせていただきましたが、資本コスト、成長投資、株主還元が三位一体となった事業展望の良い意味での競い合いが増えてくると思います。
第三は中国消費の取り込み。
中国は現在ゼロコロナ政策を撤回し、新型コロナウイルス感染者が急増している模様です。今後の政策について筆者のような素人が語る資格は乏しいと思いますが、あえて考えていくとすると、改めてコロナ封じ込めに回帰する可能性も否定できません。
しかし、筆者はデフレ下でデレバレッジ(過剰債務の削減)を進めるべき局面に中国はあると認識しており、そのためには経済活動の過剰な抑制が芳しくないと当局が考えているのではないかと推察します。
道筋について国民の同意が得られているのかは分かりかねますが、春先までに気が付いたら集団免疫を達成しているという可能性も考えておくべきではないでしょうか。
その意味で言うと、ファーストリテイリング、良品計画、イオン、中国本土進出済みの飲食チェーンなどが、中国国内消費の回復をしっかり収益化できるのかが大きなポイントになると思います。クロスボーダーECサイトも同様です。
また、伊藤忠商事傘下に入り中国ビジネスの道筋をつけつつあるデサント、中国での販売を拡大しつつあるスノーピークなどの事業展開にも注目しています。
2023年が平和でみなさまにとってより良き年になることを心より願っています。どうぞよろしくお願いいたします。
プロフィール
椎名則夫(しいな・のりお)
都市銀行で証券運用・融資に従事したのち、米系資産運用会社の調査部で日本企業の投資調査を行う(担当業界は中小型株全般、ヘルスケア、保険、通信、インターネットなど)。
米系証券会社のリスク管理部門(株式・クレジット等)を経て、独立系投資調査会社に所属し小売セクターを中心にアナリスト業務に携わっていた。シカゴ大学MBA、CFA日本証券アナリスト協会検定会員。マサチューセッツ州立大学MBA講師
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