+Jが挑むモンクレールの牙城 ユニクロにとって勝負の「冬」となる理由
この不思議な現象はなぜ起こるのか?
私自身、例えば六本木に食事にいくとなると、一張羅のモンクレールを着てゆくと思うし、ビジネスであればバーバリーなどのトレンチコートを着ていくと思う。そして、この「消費者の傾向」こそが、日本のアパレル企業をして、世界のグローバルSPAなど低価格ラインを打ち出すブランドに競争勝ちするセグメントを示しているのである。
いくら、SS(春夏)の軽衣料で競争負けしても、大丈夫。日本のアパレル企業の収益の大部分はFWから得られる。これが後半戦の勝ちパターンだったわけだが、仮に、重衣料が動かなければ日本のアパレル企業は痛手を負ってしまうリスクも孕んでいる。
例えば、コロナウイルスで隠れてしまったが、昨今の「暖冬」や都内や都市部のオフィス環境発達は、消費者にとって重衣料の必要性を低くし、結果、アパレル企業の販売を減らし、痛手となっていることになる。
天下のスーパーブランド、LOUIS VUITTON(ルイ・ヴィトン)も面白いブランド戦略をとっているので解説しよう。
「ルイ・ヴィトンとユニクロは同じだった」というと、「何をいっているのか」という人もいると思うが、ちょっと一昔前にタイムスリップしてもらいたい。あれだけ高価なブランドの小物類(財布など)を女子高生が普通に持っていたし、私の母など、おおよそファッションには疎い女性も1~2個アイテムを持っていた。あれだけ高価な小物なのに、まるでユニクロのように、所得や社会的地位などに関係なく女性の多くが持っていたのである。
本来、あのようなプレミアム・ブランドは、極めて狭いセグメントに対し販売するものだが、日本(やアジア)でのルイ・ヴィトンのマーケティングは非常に上手だと感じた時があった。
それは、「プレミアム感」を大事にしながら消費者のお財布事情に関係なく、「一生モノ」「自分へのご褒美」など、「一般庶民対象」と「プレミアム感」を共存させるというブランディングである。
これは、冬の街をあるけば、道行く人の肩や胸についた「MONCLER」や「CANADA GOOSE」などのロゴが目に入る現象と同じだ。これらのプレミアム・ブランドは、ある瞬間、ユニクロのような国民服に変化してしまったのである。
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