ESG経営が「リスクまみれのD2C化」を推進する理由

河合 拓 (株式会社FRI & Company ltd..代表)
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D2Cがもつ余剰在庫リスクとは

Adrian Vidal/istock
Adrian Vidal/istock

いかなる変化にも、必ず「必然性」と「トリガー」がある。今、D2C という名を見ない日がないほど「D2C」というワードがあちこちで踊っている。今も昔もアパレル業界に「中間流通を外せばコストは下がる」という発想があるからで、これは上記に上げた「南下政策」と無関係でない。

しかし、アウトソーシングというのは、本来は、その機能が競争優位の源泉であれば、例えコストが高くとも内製化すべきだ。単ににコストだけでものを考えるから、気づけば全てが「空洞化」するのだ。持つべき機能を外注化すれば、短期的利益を求めても中長期にジワジワと競争力を削いでゆく。こうした日本市場の歴史の必然的結果として生まれたのが日本のD2C(あえて、日本市場という言葉を使わせていただいた)である

工場が企画機能をもち、縮小著しい日本の小売やアパレルに供給を繰り返していても業績は下降線を描くだけである。当然、彼らはなんとかしたいと思いダイレクトに消費者に販売したいと考える。今ECモールさえあれば、日本中、いや、世界中の消費者に商品が届けられる。こうして、あちこちに無数の工場のECサイトができあがったのである。これをD2Cと呼ぶかどうかは読者の判断におまかせしよう。

 

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記事執筆者

河合 拓 / 株式会社FRI & Company ltd.. 代表

株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)。The longreachgroup(投資ファンド)のマネジメントアドバイザを経て、最近はスタートアップ企業のIPO支援、DX戦略などアパレル産業以外に業務は拡大。会社のヴィジョンは小さな総合病院

著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「生き残るアパレル死ぬアパレル」「知らなきゃいけないアパレルの話」。メディア出演:「クローズアップ現代」「ABEMA TV」「海外向け衛星放送Bizbuzz Japan」「テレビ広島」「NHKニュース」。経済産業省有識者会議に出席し産業政策を提言。デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言

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