第284回 ダイエーと資生堂の「約束組手」渥美俊一が取り持ったチェーンストアとNBメーカーの関係

ノンフィクションライター:樽谷哲也
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評伝 渥美 俊一(ペガサスクラブ主宰日本リテイリングセンター チーフ・コンサルタント)

護送船団方式を揺さぶるチェーン店勢

 有名ナショナルブランド(NB)メーカーの家電製品にとどまらず、事実上、小売業者の販売価格を縛る再販売価格維持制の対象となっていた医薬品や化粧品、洗剤などの商品をも新興チェーン店が安売りするのを看過していられず、メーカーらはあの手この手で横槍(よこやり)を入れてきた。

 渥美俊一は、具体的な社名を伏せて、そのさまを面白おかしく回想することが珍しくなかった。

 たとえば、本誌での連載を元に一冊にまとめられた『流通革命の真実』(連載時の誌名は「チェーンストアエイジ」。ダイヤモンド社・2007年」で、《一部のメーカー》が《ペガサスクラブ加盟の企業と連携を始めていた》と、あまり表面化はしていなかったケースにふれつつ、次のような例を述べている。

 《化粧品や薬局の小売同業組合が「安売りはけしからん。乱売じゃないか。われわれをどうしてくれる」と押しかけてきました──》

 つまり、メーカーの指定する小売価格での販売を横並びで守ることで護送船団方式に永らえてきた中小零細の専門小売店の団体が安売りで急速に業績を伸ばすチェーン店勢に抗議するようになっていったのである。彼らと長年の共存共栄の関係にあったNBメーカーとしても、新興チェーン店への抗議に同調する姿勢を見せないわけにはいかなかった。

 これまでの本連載の流れからも推察いただけるように、『流通革命の真実』で実名を挙げられていないのは資生堂である。2002年5月のインタビュー取材で、渥美はあっさりと明かしている。とうに時効のエピソードということなのであったろう。

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