アジアの成長を内製化!越境ECは生存戦略である理由と2つの成功ポイントとは
越境EC、勝ちパターンモデルはこれだ!
Sheinは、本社をシンガポールに置きデータ分析を行うが、それと同時にライブコマースについては、販売先の国のPR会社にローカライズさせる。その国の事情に合わせたPRを行い、出荷元=生産工場を中国広州の産業クラスターからドアトゥドアサービスで商品を世界中に配送しているのである。この「逆モデル」をやれば良いのではないか、というのが私の提案である。
具体的には、
- 日本ブランドに対して憧れを抱いている、あるいは品質面でローカルブランドやグローバルSPAに満足していない国と市場を特定
- その国、市場で有力で影響力のあるPR会社と組み、自社ブランドをターゲット・セグメントに訴求し、その国の言語対応、ECのUI /UXの改良、可能であればヘルプデスクまで設置する
- 可能な限り輸出(日本から出荷する場合)、三国間物流(第三国から出荷する場合)を企業間で一社に一本化し、できれば、複数の企業間で共同配送を組み、
例えば商社などを介してトータルの物量を増やし、 クーリエサービスと包括契約を行って、 国際物流コストをトータル売上に占める比率の10% 以下に抑えるようにする
*この場合、物流費を単品ごとに設定しないことが重要だ。あくまでも会社全体の売上高物流費をグロスで10%以内に抑えることに主眼を置く。そこから過去数年の出荷量から理論上の単品コストを算出するのだ。消費者に対しては「一回の輸送費いくら」という具合に固定費として見せるのがコツだ。中国製も日本製も購買国からしてみれば同一物流費になれば、消費者にとってシンプルになる。
越境EC成功のカギは、タイアップする現地PR企業の腕前(ターゲットセグメントに情報を届けることができる技術力)と、工場からダイレクトに個別配送するD2C型物流モデルの構築である。
あとは、EC企業では常識となっているRFM(直近いつ購入/頻度/購入金額)、CPA(顧客獲得単価)、ROAS(広告の費用対効果)などの分析・指標を活用し、徹底したCRM(顧客との長期的良好な関係を気づく手法)を駆使すれば良い。
EC企業は、日本のまだ規模は小さいが将来大化けしそうなアパレルのインキュベート装置として、越境ECパッケージをサービスとして提供してはどうか、と私は考えている。また、こうした越境EC支援パッケージは、物流、生産背景、世界に貼りめぐされたネットワークの全てが揃っている商社の新しいビジネスモデルとしても有効ではないだろうか。
今、あらゆるところでコンソーシアムが設立され、「もはや一社の力ではどうにもできないところまで追い込まれている」というアパレル企業が増えてきた。ならば、単に数を集めるだけでなく、皆でこうした戦略を描き、縮小し購買力が落ちている日本市場をミルキング事業(これ以上成長しない事業)と見立て、ブレークイーブン(損益分岐点)を下げながら、稼いだキャッシュを越境ECに投資を振り向け、アジアの成長を内製化するべきだと思う。
団体戦にも戦略が必要だというわけだ。
プロフィール
河合 拓(事業再生コンサルタント/ターンアラウンドマネージャー)
ブランド再生、マーケティング戦略など実績多数。国内外のプライベートエクイティファンドに対しての投資アドバイザリ業務、事業評価(ビジネスデューディリジェンス)、事業提携交渉支援、M&A戦略、製品市場戦略など経験豊富。百貨店向けプライベートブランド開発では同社のPBを最高益につなげ、大手レストランチェーン、GMS再生などの実績も多数。東証一部上場企業の社外取締役(~2016年5月まで)
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