「お届け30分」はもう古い?! デリバリーピザのパイオニア、ドミノ・ピザがめざす「ピザの普段食化」

2021/07/19 05:55
    若狭 靖代(ダイヤモンド・チェーンストア 記者)
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    コロナ特需を乗り切った秘策とは

     ところで、コロナ禍でのデリバリー・テイクアウトへのニーズの高まりは、ドミノ・ピザにも注文の急増という形であらわれた。デリバリーピザ業界は、コロナ特需の恩恵を受けた業界の一つといえる。ピザを「普段食」として認知してもらうには絶好の機会でもあるが、急増した注文にはどう対応したのだろうか。

     ドミノ・ピザでは出店の際、店舗設備の基準を「最も忙しい時」に設定している。というのも、ピザはもともと、雨や雪など悪天候で外出が億劫になる時や、クリスマスなどのイベント時には注文が殺到する傾向にある。このような集中的な需要にも十分に対応するため、どの店舗でも最低2台のオーブンを基本装備とし、なかには3台配置している店もあるという。忙しくない時に合わせてオーブンを1台にしてしまえばその分コストは浮くが、それでは需要を取りこぼしてしまう。初期投資を惜しまない店舗設計をしてきたことで、コロナ禍では多い月には通常の1.5倍以上という売上の確保につながった格好だ。

     以前からの周到な準備が効果を発揮したのは、設備だけではない。ドミノ・ピザはコロナ禍が本格化した2020年4月から21年6月末までに、正社員およびクルー(店舗アルバイト従業員)合わせて39,000人超を採用し、雇用を拡大した。緊急事態宣言下での飲食店休業などの影響を受け、採用がしやすい状況だったとはいえ、簡単には集まらない人数だった。とくにピザ店のアルバイトでは、配達に必要になるバイクの免許がネックになることが多い。しかし、ここでもドミノ・ピザがかねてより行ってきた施策が功を奏した。それは、2017年から本格化した、バイクによる配達からeバイク(電動アシスト自転車)への切り替えだ。もともとは、上述のように商圏が狭くなったことや、二酸化炭素排出削減、バイクによる騒音への配慮を主眼として始まった施策だが、採用に当たって自動二輪の免許が不要なことは多様な人材を集める上でもメリットになった。現在、東京都内では約50%がeバイクによる配達に切り替わっているという。

    ドミノ・ピザ ジャパン 執行役員兼営業部長 柿内宏之氏

     「ドミノ・ピザには、Hungry to be Better(よくすることにハングリー)という、常に向上心を持って、さらに良くすることを追い求めるカルチャーがある。台場店の開店を機に、さらに未来を見据えたチャレンジを続けていきたい」と柿内氏は語る。多角的な施策で「ピザの普段食化」を推し進めるドミノ・ピザ。デリバリーピザ業界を牽引する同社の新たな展開に今後も注目だ。

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