「商品・売場改革」を推し進め四国SM市場のシェア3割めざす=マルナカ 藤本昭会長

聞き手:下田健司
構成:田中 浩介
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CVS対策として新業態「マール」を開発

──今後の店舗展開については、どのように考えていますか。

藤本 イオングループ入りして以降、毎年2ケタの出店を考えていたのですが、出店よりもMDや人事制度の調整を優先して進めたために、13年度の出店は1店舗にとどまりました。14年度は大量出店する準備が整い、上期にはスクラップ&ビルド(S&B)、業態転換を含めて5店舗をオープンしました。すでにドミナントを築きつつある香川県ではS&Bと業態転換により、シェアナンバーワンを堅持します。香川県以外の四国3県では2000平方メートル前後のSM出店により店舗網の拡大を図ります。

 競争が厳しくなっていることから、14年8月に高松市内の小型SMを転換し、「ma:ru(マール)牟礼店」(売場面積約570平方メートル)をオープンしました。マールのコンセプトは「SM+CVS+カフェ」です。

 最大の特徴は、約30席分のイートインコーナーを設け、朝と昼の時間帯に注文を受けてから調理するモーニングやランチ、淹れたてコーヒーを提供することです。生鮮4部門はプロセスセンターと総菜子会社の味彩工房から供給する商品を揃えることで、運営コストを引き下げました。朝6時から夜24時まで営業し、CVSに対抗する小型店舗のモデル構築を進めます。既存店からの業態転換が中心になりますが、長期的には「マール」を100店舗体制にしたいと考えています。

 四国のSMの市場規模は約8000億円といわれています。当社はすでに2割近くのシェアがありますが、新規出店と既存店改装により、四国各県でトップシェアをめざします。中長期的にはマルナカ単体でSM市場のシェア3割、イオングループ全体でも四国の食品市場全体の3割のシェアを目標に据えています。

──新規出店と並行して、既存店の活性化に力を入れるSMが増えています。

藤本 12年度以降は年間2ケタの改装を実施してきました。14年度は、おもに生鮮食品と総菜の売場拡大と、セルフの淹れたてコーヒーを提供するイートインコーナーの設置、菓子売場での玩具販売を目的とした改装を進めています。20年以上も活性化していない店舗を中心に、年間で10~20店舗を改装する見込みです。

 実は14年度下期も積極的な出店を計画していました。しかし、建築資材の高騰や労働者の確保難のため出店コストが上昇し、投資回収の期間が長くなっているため、計画を見直しました。下期の出店は1店舗にとどめ、「マール」のモデル構築と既存店の活性化に注力することにしています。

イオングループの物流機能を活用

──さて、イオングループのインフラを、どのように活用して、相乗効果を発揮していくつもりですか。

藤本 当社は地場に密着してきた強みがあります。これを生かしつつ、イオンのインフラを活用して効率改善を図れれば、さらに成長できる余地は大きいと考えています。

 すでにイオングループのプライベートブランド「トップバリュ」や電子マネー「WAON(ワオン)」、また情報システムを導入しました。売上高全体に占めるワオンの決済比率は6割を超えるまで、お客さまに浸透しています。

 現在、とくに力を入れているのは、物流の再構築です。イオングループの物流機能を使い、配送効率の向上、リードタイムの短縮、コスト削減に取り組んでいます。これまではほとんどの商品を香川県の物流センターから愛媛県の店舗へ、徳島県の物流センターから高知県の店舗に運んでいました。

 しかし、13年にイオングローバルSCM(千葉県/山口緑社長)に業務を委託して、愛媛県に店舗配送の拠点となるクロスドッキングセンター(XD)を開設。14年には高知県内にもXDを設けました。四国4県に物流拠点を置くことで物流効率は大きく改善されました。

 香川県にある既存の物流センターは、新たなXDの稼働によって余力が生まれます。県内の物流センターに中小型店向けの鮮魚・精肉の加工設備を設けマルナカとイオングループの物流を再編成したほか、グロサリーセンターに投資して冷蔵と常温の商品をトータルで管理できるようにしました。また、冷凍食品についても、卸会社の冷凍倉庫を借り受け、生鮮3部門と総菜、日配品、冷凍食品を一括して店舗に納品できる機能を拡張しました。

 加えて、イオングローバルSCMが香川県坂出市に約12ヘクタールの広域型物流センター(RDC)を整備中です。イオングループにとっての四国の物流拠点と位置づけられており、15~16年の稼働を見込んでいます。RDCの隣接地にはプロセスセンター(PC)を開設する計画もあります。このRDCは四国に店舗を展開するイオンリテールなどグル―プ企業と共同使用する予定であり、グループ全体に大きなメリットをもたらすと期待しています。

──イオングループの一員として、着々とインフラ活用を進めているのですね。

マルナカ

藤本 整備できることから手をつけている状況です。情報システムや物流などのインフラの導入はある程度の道筋をつけたと考えているのですが、社員の意識や行動を変えるのには時間がかかります。

 イオングループ入りする前は、人材教育にほとんど投資していませんでしたので、ゼロから教育制度を組み立てました。責任ある職務につくためのキャリアパスを用意するとともに、店長教育などその職務に応じた人材教育を実施することで、経営の根幹を担う社員育成にも努めています。

 社員の自主的な意識改革や行動改革を促すために、イオングループのインフラ活用は十分役に立つと考えています。当社は組織的にチェーンストアを運営するという面では、遅れているかもしれません。チェーンストア企業としての発展は道半ばです。

 しかし、話してきたような政策を実施することで、四国の「ベスト・ローカル」なSMに近づけるよう努めていきます。

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