通勤客が激減する駅ナカ店舗も実は好調 不況・コロナ禍でも、成城石井が絶好調な理由

兵藤 雄之、松岡 由希子 (フリーランスライター)、ダイヤモンド・チェーンストア編集部 (株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア)、大宮 弓絵 (ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長)
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「高級スーパー」ではない成城石井の実態

 では、成城石井がコロナ禍でさらに支持を得ている理由は何か。これを確かめるべく、本特集では計8つの独自調査を実施した。すると、成城石井のあまり認識されていない実態が明らかになった。

 まず、成城石井は高付加価値な商品が品揃えの中心であることから、「高級スーパー」と括られることが多く、主に富裕層の需要を取り込んでいると思われてきた節がある。

 しかし、今回行ったレシートデータによる利用動向調査の結果では、「最も日常的に利用するSM」として成城石井をあげた人はごく一部であった。つまり、成城石井の利用者の中心は、同社の店で食卓の食材を買い揃えるような富裕層ではなく、平均的な価格のSMで買物をしつつ時に訪れる一般的な消費者であり、この層からの需要を取り込んでいることが現在の好調の要因になっていると考えられる。

 さらに同調査における興味深い結果として、コロナ禍の成城石井でレシート出現率が最も増えている商品カテゴリーは「総菜」だった。総菜といえば、日持ちがしないことなどから、来店頻度を減らしてまとめ買いをする傾向にあるコロナ禍において多くのSMでは売上が伸び悩んでいるカテゴリーである。

 その総菜が、成城石井では好調な要因は何か。1つは外出自粛生活で外食ができないぶん、自宅で「ちょっと贅沢がしたい」というニーズを成城石井の総菜が取り込んでいるためだと想定される。

 そして今回の商品調査からはもう1つ意外な要因が見えた。成城石井の総菜は、確かに1品単価こそ高いものの、ボリュームのある商品設計で、実はグラム単価では一般的なSMと大きく変わらなかった。加えて徹底した商品管理体制で日持ちする期間も長く、コロナ禍の総菜ニーズに合致しているのだ。

 これらの成城石井の姿から見えてくるのは、成城石井が、決して富裕層向けの“高級品”の販売をめざしているチェーンではないことだ。消費者に高品質な商品を低価格で販売するという付加価値を提供するために努力を重ねている企業であり、その価値がコロナ禍であらためて認識されていると考えられる。

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記事執筆者

松岡 由希子 / フリーランスライター

米国MBA 取得後、スタートアップの支援や経営戦略の立案などの実務経験を経て、2008年、ジャーナリストに転身。食を取り巻く技術革新や次世代ビジネスの動向をグローバルな視点で追う。

記事執筆者

ダイヤモンド・チェーンストア編集部 / 株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア

ダイヤモンド・チェーンストア編集部は、業界をリードする提案型編集方針を掲げ、小売業の未来を読者と共に創造します。私たちは単なるニュース伝達に留まらず、革新的なビジネスモデルやトレンドを積極的に取り上げ、業界全体に先駆けて解説することを使命としています。毎号、経営のトップランナーへの深掘りインタビューを通じて、その思考や戦略を読者に紹介します。新しくオープンする店舗やリニューアルされた店舗の最新情報を、速報性と詳細な分析で提供し、読者が他では得られない洞察を手に入れられるよう努めています。私たちの鋭い市場分析と、現場の細部にわたる観察を通じて、注目すべき店舗運営の秘訣を明らかにします。

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記事執筆者

大宮 弓絵 / ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長

1986年生まれ。福井県芦原温泉出身。同志社女子大学卒業後、東海地方のケーブルテレビ局でキャスターとして勤務。その後、『ダイヤモンド・チェーンストア』の編集記者に転身。

最近の担当特集は、コンビニ、生協・食品EC、物流など。ウェビナーや業界イベントの司会、コーディネーターも務める。2022年より食品小売業界の優れたサステナビリティ施策を表彰する「サステナブル・リテイリング表彰」を立ち上げるなど、情報を通じて業界の活性化に貢献することをめざす。グロービス経営大学院 経営学修士

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