「あたらない牡蠣」がついに誕生! ゼネラル・オイスターの牡蠣食文化へのあくなき情熱

千葉 哲幸 (フードサービスジャーナリスト)
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苦節10年、持続可能な水産事業を確立

 ゼネラル・オイスターは14年9月、富山県下新川郡入善町に海洋深層水を使用した浄化施設を設けた。全国の約60カ所で獲れた牡蠣をここに集約して48時間以上かけて浄化してから全国の飲食店に卸している。この取引先は約680社となっている(23年5月現在)。

 ゼネラル・オイスターの「あたらない牡蠣」への挑戦はゆるめることはなかった。吉田氏はこう語る。

 「富山(の浄化施設)で浄化された牡蠣はウイルスが完全になくなっているというと、それは断言できない。浄化されている状態が99.99999……%といった感じでしょう。海外では『うちの店でオイスターを食べて、白ワインを1本くらい飲んでくれ』といった楽しみ方が多いですが、日本の場合は事故が起きたら飲食店が営業停止になります。このようなリスクがあるので使いたくないというところもあるのです」

 「しかし、オイスターは歴史と伝統のある食文化ですから、とくに外国人シェフは使いたがる方が多い。当社の浄化施設が実績を積み始めると、この施設を視察しにやってきて、当社の牡蠣を使用するところが増えてきました。『ウイルスが100%存在しない牡蠣』というニーズは確実に存在します。それを可能にするには『陸上養殖』です。この方法は、既存の養殖と比べるとコストがかかります。そこで多少原価が高くても『あたらない』という付加価値は、あまねく料理人さんに感じていただけることでしょう」

 ゼネラル・オイスターでは「あたらない牡蠣」を開発するため、14年2月から牡蠣の陸上養殖実験を沖縄県島尻郡久米島町で行うようになった。16年4月にジーオー・ファーム(本社/沖縄県久米島町、代表/吉田琇則社長)を設立し、本格的に実証実験に取り組んできた。ここでは牡蠣のエサとなる植物プランクトンの大量安定培養技術や、完全陸上で成貝まで生育させる飼育技術を確立した。

沖縄。・久米島で行われている陸上養殖の様子。これで「あたらない牡蠣」の生産が可能になった

 そして、2023年7月27日、一般社団法人の宮城県公衆衛生協会において、ゼネラル・オイスターの牡蠣はノロウイルスが「UD(検出されず)」となった。こうして、8月4日に「あたらない牡蠣」が誕生したことの記者発表が行われた。タイトルは「世界初 海洋深層水を活用した牡蠣の完全陸上養殖に成功」である。苦節10年が実ったかたちだ。

ゼネラル・オイスター代表取締役社長の吉田琇則氏(右)とグループで生産事業を担うジーオー・ファーム取締役COOの鷲足恭子氏(左)。

 同社では現状を「実証実験ラウンド」が終わった段階として、これからは「量産化ラウンド」に入るとしている。一般市場に流通するのは3年以内と想定している。

 量産体制の第1段階は「年間45万個」を想定。この状態でゼネラル・オイスターでの牡蠣の卸価格がこれまで1個約150~250円だったものが、陸上養殖は300~500円、そしてレストラン(直営店舗)での販売価格が、それぞれ約400~600円、約600~1000円と想定している。

 この牡蠣の陸上養殖は、自然環境の変動に左右されない、持続可能な水産事業であり、六次化事業の骨格を強くしたという点で重要な役割を果たしている。

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記事執筆者

千葉 哲幸 / フードサービスジャーナリスト
柴田書店『月刊食堂』編集長、商業界『飲食店経営』編集長を歴任するなど、フードサービス業界記者歴ほぼ40年。業界の歴史を語り、最新の動向を探求する。著書に『外食入門』(日本食糧新聞社、2017年発行)。

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