アクシアル原和彦社長に聞く「食品スーパーの未来」後編 投資の仕方が激変!選択肢は3つに

2019/04/02 05:00
『ダイヤモンド・チェーンストア』編集長 阿部幸治

食品スーパー業界はこの先どうなっていくのだろうか?また、どんなテクノロジーに注目し、企業改革を進めていくべきか。またアクシアル リテイリング(新潟県)はいかにして競争優位性を今後さらに高めていこうというのか。原和彦社長に話を聞いた。ダイヤモンド・チェーンストアオンラインのキックオフインタビュー後編である。

 

24時間営業は生活インフラ 継続し続ける

アクシアル リテイリングの原和彦社長
アクシアル リテイリングの原和彦社長

――さて、新テクノロジーの導入では投資できる企業と投資できない企業に分かれ、それが業績格差へとつながる可能性を指摘していました。その投資という観点で考えると、これまでのように、シンプルに新店に投資すれば効率的なリターンを得られた時代からは変わりつつあります。投資についての考え方を教えてください。
 いちばん大事なことはマスメリットを享受することです。異業種、ECを含めたチャネルの多様化とオーバーストア状態になり、確かに店数が増やしにくい時代となりました。
では何に投資してリターンを得ていくかというと、その選択肢は1M&A(合併・買収)、2これまでの標準化フォーマットの見直しによる新たな出店フォーマットの開発、これは居抜き出店にも対応可能なものになる可能性があります。そして新たな出店フォーマットを成立させるために、店の効率性を高めるプロセスセンター、コミサリーの体制構築と整備、ということになります。

――投資のあり方が大きく変わりますね。
 ええ、ですから当社でも新たなフォーマット開発として、昨年からexpressフォーマットの展開をスタートしました。

――店の運営の仕方も変わりますか?昨今ではコンビニエンスストアの24時間営業というビジネスモデルが揺らいでいます。アクシアル リテイリングでは13店舗で24時間営業を行っています。個店ごとのオーナーが対応しなければならないCVSとは事業は違いますが、人手不足などを背景に、今後変化はありそうでしょうか?
 24時間営業に対するニーズがあることは明らかです。それ以上にスーパーマーケットは生活インフラだと考えていますので、その地域インフラが止まる時間をできるだけ少なくするという社会的使命を背負っていると思います。ですから、今後も一部店舗での24時間営業は継続していきます。仮定の話ですが、今後テクノロジーも進化しますから、例えば夜中の時間帯だけ店内の一部売場だけをオープンして無人化するといったことも可能になるでしょう。

 

10年後を見据えた重要キーワードが “信頼”である理由


――10月に消費増税が予定されています。その影響をどう見ますか?
 SMは軽減税率の対象となる商品が多いので、それほど大きな影響は受けないと見ている人が多いです。一方ドラッグストアは単純に増税になる商品を多く扱うので戦々恐々としているはずです。そこでドラッグストアは価格競争をしかけてくるはずで、メーカーの値上げも相まって、増税後は激しい消耗戦になる可能性があります。

――そこで、低価格競争だけの土俵に乗ると、食品スーパーは負けてしまいます。
 そうです。価格対応しながらも、品揃えと、ドラッグストアにはできない鮮度管理が難しい分野で差別化することが重要です。自社にしかない強みを磨くことが重要となり、そのためには一定の規模と、その強みを引き出すためのITやロジスティクスなどの機能、それを実行する人材が必要になるわけです。

――たとえば食を通じて健康になる、という提案も食品スーパーならではで、異業種との競争では欠かせないコンセプトになりそうですね。
 ええ、ですから当社では以前から、「お客さまから自然と健康になっていただく」ための商品開発、提案を強化しています。
 その方向性は大きく3つあり、1つは「野菜をたくさんとっていただく」ということ。そのため、今期だけでサラダの新商品を50SKUも投入しました。2つ目は良質なタンパク質である「魚を多く摂取していただこう」という取り組み。魚離れが進んでいますが、当社がこの取り組みの結果、「魚は好きだが、面倒なことをしてまで食べたくない」というお客さまの心理がわかりました。ですから「魚菜屋」というコーナーを立ち上げ、鮮魚部門の生魚を使って調理した魚総菜を出したところ、非常に好評をいただいています。もし総菜部門が担当していたとしたら冷凍魚を素材として使用していたでしょうから、ここまで大きな売上ボリュームを持つカテゴリーにはならなかったのでは思います。
 3つ目は「塩分摂取量の抑制」で、塩分の代わりに“だし”で旨味を出して、お客さまが満足する味を提供することに注力してきました。現在この“だし香る”シリーズは74SKUにまで増えています。
 こうした商品の展開が、“アクシアルらしさ”の打ち出しに繋がり、差別化され、お客さまの来店につながっていると見ています。

魚離れの要因は、魚の味が嫌いなのではなく、面倒なことをしてまで食べたくないという心理。そこで、魚総菜を提供する「魚菜屋」というコーナーを立ち上げ、好評を博している
魚離れの要因は、魚の味が嫌いなのではなく、面倒なことをしてまで食べたくないという心理。そこで、魚総菜を提供する「魚菜屋」というコーナーを立ち上げ、好評を博している

――他社の食品スーパーを見ても、最近“だし香る”を打ち出す企業が増えてきましたね。
 ええ、とてもいいコンセプトなので、発案した瞬間に「これはマネされるな」と思いました(笑)。でも、それで良いのです。むしろ、だし香る”が一般的になって、全国的に健康寿命が延び、その中で当社が元祖なんだよ、ということを打ち出せば、もっとより多くのお客さまにこの商品を広げることができます。

塩分の代わりに“だし”で旨味を出す、“だし香る”シリーズは74SKUにまで増えている
塩分の代わりに“だし”で旨味を出す、“だし香る”シリーズは74SKUにまで増えている

――最後に、これから10年後を見据えて、大事なキーワードはなんでしょうか?
 このお題をいただいてから色々考えた結果、「信頼」という当たり前の言葉にたどり着きました。経営や店舗運営の手法や手段、ライフスタイルも大きく変わりますが、お客さまが購買を決定するのは結局、その店、そのブランドへの信頼です。その信頼を作るためには、規模・機能・人材は必要であり、それによりマスメリットを創出していくのは先ほど話した通りです。

――総合力ということでもありますか?
 総合力もそうですが、そこに1本筋の通った「自社ならではの思想」のようなものがなければ信頼を醸成することはできません。単にM&Aで規模だけ大きくなっても、理念が共有化されなければ信頼の力は高まらないからです。ですから当社では理念を共有できる企業としかM&Aは行いません。

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