3年かけた足場固めで収益力回復、今期は攻めに転じる=京王ストア 内藤雅浩 社長

聞き手:千田 直哉 (編集局 局長)
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ハウスカード会員が来店客の50%を占め、売上高の70%を握る

──京王電鉄グループは「京王パスポートカード」というハウスカードを展開しています。このカードからの情報や、グループシナジーも出ているのでしょうね。

内藤 これは相当に大きな武器になります。「京王パスポートカード」は、京王グループ全体で使えるカードです。電車やバスに乗る、タクシーを利用する、ホテルに泊まる、百貨店で買物をする……生活に密着した消費行動に、共通ポイントが付く。とくに沿線にお住まいの方には、使い勝手のよいカードですね。現在、カード会員は約100万人おりますが、京王ストアが出店しているエリアのカード保有率は高いですよ。

 ハウスカード利用分の顧客分析の結果、カード会員のお客さまの売上が全体の7割に達することがわかりました。カード会員のお客さまは、それほど“浮気”をしません。ですから、そうしたロイヤルカスタマーが求めている品質は守っていこうと考えています。そうした傾向がとくに顕著なのが「キッチンコート」なので、今後は積極的に出店していこうと考えています。ただし、「キッチンコート」はどのような立地でも成功する業態ではありません。都心から10km圏内のエリアなら成立すると見ています。

──ハウスカードは、販促にも効果テキメンですね。

内藤 ポイントカードは有力な販促ツールですね。ポイント5倍セールを実施すると、売上高、来店客数ともに2~3割は増えます。

 販促については今、チラシの効果を検証し、見直しを進めているところです。実は、この1年間、チラシ販促の効果検証に取り組んできたのですが、効果がはっきりしていません。そこで2月から実験的に、従来なら週に2度配布していたチラシを1回に減らして、動向を観察しています。チラシの配布回数を減らしても、実際にはそれほど売上に影響していないことがわかってきました。

 3月下旬からは、価格訴求で売るものと、品質を訴求するものの2パターンにチラシを分けています。価格訴求をする商品については日替わり商品を前面に打ち出し、一方、こだわり商品のように商品自体を訴求するためのチラシは、価格訴求のものとは別にしています。

──ハウスカードから吸い上げたデータを活用した商品政策(MD)などには取り組んでいますか。

内藤 MDに関しては、アイテム数の見直しに着手しました。

 当社の300坪タイプの店舗の場合、総アイテム数は家庭用品まで含めて1万3000~1万4000アイテムになります。食品だけだと7000~8000アイテムくらいはあると思います。ただ、実際には7000~8000アイテムというのは多過ぎると思うのです。

 そのため今は、品揃えを絞り込む方向にあります。お客さまの支持が高いカテゴリーについては品揃えの幅を確保しながら、商品回転率の低い部分はアイテム数を削減し、主力商品を強化しようということです。それがお客さまのニーズにこたえることになり、当社の経営効率の改善にもつながっていきます。

 食品の“こだわり商品”については、若干、惰性で増やしてしまった反省があります。現状の品揃えは10~20%程度は余分だと思います。ですから、お客さまに向けて何を売っていくのかを考えなくてはいけません。そのために、購買データを活用し、商品構成を見直しています。

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聞き手

千田 直哉 / 株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア 編集局 局長

東京都生まれ。1992年ダイヤモンド・フリードマン社(現:ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。『チェーンストアエイジ』誌編集記者、『ゼネラルマーチャンダイザー』誌副編集長、『ダイヤモンド ホームセンター』誌編集長を経て、2008年、『チェーンストアエイジ』誌編集長就任。2015年、『ダイヤモンド・ドラッグストア』誌編集長(兼任)就任。2016年、編集局局長就任(現任)。現在に至る。
※2015年4月、『チェーンストアエイジ』誌は『ダイヤモンド・チェーンストア』誌に誌名を変更。

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