食べ放題を「満腹」以外の価値に転換した、「焼肉きんぐ」躍進の秘密とは

油浅健一
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焼肉きんぐ、丸源ラーメン等を展開する外食チェーンの物語コーポレーションはさきごろ、2022年6月期第3四半期連結決算を発表。 売上高は539億8900万円(前年同期比7.7%増)、営業利益19億6600万円( 43%減)、経常利益 47億5600万円(同 2.9%増)、 純利益は28億9400万円(同1.3%減)だった。
コロナ禍の営業自粛等で営業利益は大幅減となったが、同社の勢いに陰りはない。店舗数も着々と増やし、22年3月末時点で全業態で国内614店舗(うち直営360店舗、FC235店舗)、海外19店舗となり、飲食チェーンとして存在感を年々高めている。コロナ 禍で全体的に外食企業が苦戦するなかで踏みとどまっている同社の特徴と強さを明らかにしたい。

焼肉チェーンの風雲児が強い理由

 躍進をけん引するのは焼肉チェーンの「焼肉きんぐ」だ。いくつかある焼肉チェーンのひとつだった同社の急成長は、2009年7月に石川県野々市市に「焼肉きんぐ」1号店のオープンから始まった。

 大きく変えたのは業態だ。食べ放題専門にすることで、特にファミリー層の支持を集め、一躍人気チェーンへと変貌を遂げた。

 もちろん、単に食べ放題にするだけではここまでの躍進はできない。「焼肉」と「食べ放題」なら、基本的にどこがやってもそれなりの成功はできる。しかし、人気を継続し、さらにチェーンとして店舗を増やし続けるとなるとそのハードルは一気に高まる。

食べ放題の仕組みを根本から変えた数々の取り組み

 同社が食べ放題への転換へあたり、取り入れたのはタッチパネルによる注文とりだ。時間制限の食べ放題は時間が勝負。できるだけ早く注文し、たくさん食べて元を取ろうというのが顧客心理。そこで同社は座席でのタッチパネル注文によって、スタッフがつかまりづらい等の時間ロスをなくし、不満を吸収した。

 さらにセルフ式でなくスタッフが肉を座席へ運ぶタイプとすることで、より新鮮でおいしい肉の提供にこだわった。同時に顧客が肉を取りに行く時間をなくすことで、食べ放題における「食べる以外の時間」を可能な限り最小化し、ある程度の利益を犠牲にしてでも顧客満足度を高めることを追及したのだ。

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