1000店、2000億円達成!空白の都心マーケットでまいばすけっとが成功した理由とは

小野 貴之 (ダイヤモンド・チェーンストアオンライン 副編集長)
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首都圏の小売激戦区で急成長できた理由とは

 まいばすけっとはなぜ、競争激しい首都圏において、急成長を遂げることができたのか。

 その要因の1つが、小型フォーマットの強みを生かした出店戦略だ。まいばすけっとが商勢圏とする東京23区と神奈川県の都市部では、標準的なSMが出店可能な物件は皆無といっていいほど少ない。とくに都市部への出店では「物件規模」の問題が立ちはだかるが、売場面積40~60坪を標準とし、加工場も必要としないまいばすけっとは、コンビニエンスストア(CVS)や飲食店の退店跡への居抜き出店を中心に、マンションやオフィスビルの1階部分などに出店することでドミナントを築いてきた。

 そうした出店によって得られるのは、消費者との圧倒的な「近さ」だ。自宅から最も近い、生鮮食品を含めた日々の食卓に必要なものが揃う店として、まいばすけっとは消費者の支持を集めている。本特集でまいばすけっとの利用実態に迫るべく消費者モニター調査を実施したところ、利用客の大半がまいばすけっとの「近さ」に魅力を感じて来店していることがデータからも明らかとなっている。

 ただ、いくら出店できるといっても都市部の物件は賃料が高く、そのぶん採算確保のハードルも高くなる。そもそもCVSが成立しなかった立地にも居抜き出店し、一般的なSMと同等の低価格で販売するのだから、その難易度の高さがわかるだろう。

 こうした条件下でも出店し続け、かつ黒字を確保できるのは、CVSとは異なる都市生活の食生活ニーズを満たすために試行錯誤が繰り返された商品政策(MD)に加えて、まいばすけっとの「効率の高さ」に依るところも大きい。

 まいばすけっとでは、複数店舗を1人の店長がマネジメントするスーパーインテンデント制をとっており、2人以下での店舗運営を基本としている。店舗はバックヤードの作業場を持たず、店内調理・加工はせずに全商品をセンターから供給する。品揃えは絞られ、棚割りは高いレベルで標準化されている。販売ではチラシ販促を行わず、EDLP(エブリデイ・ロープライス)を実施。店内スタッフの作業は単純化され、作業の種類も少ない。さらに足元では、さらなる出店に向けて作業手順マニュアルの見直しを進めており、各店舗に紙で配布しているマニュアルを22年2月期に全面電子化するとしている。

 この高度に標準化されたオペレーションは、パート・アルバイト従業員の働き方にも柔軟性を与えている。希望の時間などに合わせて、近隣の複数店舗で働くことが可能なのだ。まいばすけっと側からしてみれば、各店に在籍するスタッフだけでシフトの割り当てを完成させる必要がなく、フレキシブルに作業割り当てができることを意味している。

 こうした効率を追求する数々の取り組みについて、日本リテイリングセンターリサーチ・ディレクターの渥美六雄氏は「まいばすけっとは早期から500店突破必達という目標を掲げており、その達成のための体制づくりを事業運営の絶対原則、かつ最優先事項として進めてきたのだろう」と指摘する。創業時、あるいはまいばすけっとプロジェクト始動時から続く、多店舗化を前提とした「仕組み化」が、高い効率を支えているのである。

 消費者から近い、生鮮食品が揃う高効率の店──。まいばすけっとはS MとCVSの“いいとこ取り”をしたようなフォーマットといえる。そして、それにより競合他社が取れていなかった“空白”だったポジションを独占することで、約16年という短期間で他社が追随できない規模のドミナントを築き上げてしまったというわけだ。

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