ユニクロがデジタル人材に年収10億円を払う理由と時代遅れのKPIが余剰在庫を量産する事実
ファーストリテイリングがデジタル人材に
最大10億円を支払う意味とは
![ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長](https://diamond-rm.net/wp-content/uploads/2021/04/2021-04-08T094021Z_1_LYNXMPEH370K8_RTROPTP_4_FASTRETAILING-CEO.jpg)
「データサイエンティスト」と呼ばれる、デジタルとマーケティングの両刀遣いを社内に揃えることが、デジタルマーケティングの覇者になる条件といわれている。だが現実は、システムは詳しいが分析力はサッパリという「デジタル人材」が大量に「データサイエンティスト」の名をかたり、いわゆる「マーケター」としての腕はサッパリというケースが散見される。
「データサイエンティスト」は、ウエブ以外の、リアル店舗にも設置されたデジタルデータを苦も無く操り、ゼロベースで事業上の仮説を縦横無尽に抽出し、いままで知ることができなかったような神の領域にまでもデータで検証する、顧客の動態的データから将来予測と商品の関係性を見いだす人だ。21年、1月16日日経新聞で「ファーストリテイリング」が、有能なデジタル人材に10億円を支払うと報道し、産業界は度肝を抜かれたが、逆に言えば、それだけデジタルとビジネスの両刀遣いが貴重な存在だということである。
さらに、DXには目標が大事と判を押したようにいう人が多いが、「では、その目標とは何なのか」と問えば、システム導入する事業会社本人はおろか、本来、システム導入をするベンダーとユーザの間に立つコンサルタントでさえ、その目標とやらを理解していない。つまり、ユーザ、コンサル、SIerの3パーティが、過去から今に至るまで「目標を決めよ」と、他力本願の如く禅問答のような言葉を繰り替えしているだけなのだ。
10億円支払えない企業がやるべきことと、それを阻害するもの
日本には、昔から「三人寄れば文殊の知恵」という言葉がある。ユニクロのように10億円払えない企業は、デジタルのプロ、事業のプロ、両者の意見を合理的にまとめるプロの3パーティーに分け、3名で知恵を出し合えば良いのだが、日本企業にはこれができない構造的欠陥がある。それは、新卒採用と純血主義だ。
私がコンサルティングに入る会社で、とくに業績が急降下している会社ほど、「純血主義」を守り中途採用をしていない。彼らは、必ず「うちは特別だ」という。だから、何も知らない学生を、自分の会社の先輩に仕事を教えさせ中途から入った人間には「あいつは空気が読めない」とか、「うちの文化を理解していない」など、実際は自分たちの方が特殊なことに気づいておらず、テコでも動かない組織を作り上げている。私が、パートナー(コンサルティング会社の最高職位)に昇進したとき、そのファームの過去の成長トレンドグラフをみせられ、急激に成長をした変曲点を見せられ理由を話し合ったことがある。
答えは、「その年に新卒採用を絞り込み、経験者を大量に入社させた」ということだった。そのファームは結果的に、社内のコミュニケーションは「論理」と「事実」、「数字」でなされるようになってゆく。これが、正しい「三人寄れば文殊の知恵」だ。「うちの会社ではこれが常識だ」という会社はもはや救いようがない。私たちは変わりたくない、といっているのと同じだからだ。
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