インフルエンサー・プラットフォーマー「Tokyo girls market」驚異の戦略とは
Tokyo girls marketの衝撃から越境ECを学べ
そこで今回解説したいのが、Tokyo girls market (https://tgm.dholic.co.jp/) である。
Tokyo girls marketは、韓国のアパレル企業Dholic社が運営している韓国企業だ。この会社は、インスタの「企業サイトにしか飛べないため、欲しい商品が探せない」という女子のカスタマージャーニー(服が欲しくなるという段階から、いろいろな情報をあつめ、服を買うまでのプロセス)課題を解決するソリューションプラットフォームである。
まず、インスタグラム上で「インフルエンサーA」が気になったとする。そこで、このTokyo girls marketに登録すると、同社のサイトへと飛び、例えば、インフルエンサーAの写真だけが集められる。その中から彼女が着ている服をクリックすると「企業サイト」でなく「自社サイトの中で、ターゲットとする商品の購買サイト」にゆきつくのだ。
私は、この一連の動きをみてカラダの震えが止まらなかったほどだ。単にECサイトを中国語で立上げている、あるいは、卸売りに渡してデータベースマーケティングさえやっておらず越境ECだといっている日本企業とここまで戦略が離れているのか、と。
インスタから特定企業の商品サイトに飛ばないことは知っていたが、自社でインフルエンサーを集め、気に入ったインフルエンサーが着ている服をTokyo girls marketが集め、自社サイトで、ワンクリックで買えるようにする。聞けば、このTokyo girls marketは、女子高生や女子大生の間でどんどん拡大しているという。なおTokyo girls marketは、現在「東京ガールズコレクション」を企画するW TOKYOとDHOLICの共同事業で行われている。
これこそ、(韓国からみた)日本から外国への「越境EC」のヒントになるではないか。日本のZ世代という、日本の「オジさん経営者」が理解もしていないセグメントに静かに入り込み、彼女たちのカスタマージャーニー、そして、インスタが持つ構造的な成約と消費者の困りごとを正しく、そして、細かく分析し、それを自社で解決しているのだ。売れないはずがない。
私が講演をやり、Sheinの話をすると、必ずでてくる質問が、「ではうちはどうやって越境ECで海外に売れば良いのですか」だ。これは、もはや自分で考えトライしてみることを諦め、なにか秘伝のタレはないか、コンサルだったら答えを教えよ、という態度である。こういう他力本願な組織からイノベーションは生まれないし、ましてや、このDholic社がやっているような極めて消費者起点のデジタル戦略は描けない。
まずは、しっかりその国に入り、その国と同化することだ。知らぬ間に我々は欧米のデジタルガリバー、そして、ファッションやエンタメ市場は韓国に完敗に近づいていることを直視し、どのようにリカバリ戦略をとるか決断の時が来ている。もはや、いまから10年の間に日本市場は今のアパレル企業や商品を吸収するマーケットにはなり得ない。人口が減り続け、働く人も消費する人も少なくなり、国民の賃金は上がらず正規労働者はますます減ってくるからだ。次の世代を担う世代を、海外で稼ぐ戦略を建てるべきなのである。
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プロフィール
河合 拓(事業再生コンサルタント/ターンアラウンドマネージャー)
ブランド再生、マーケティング戦略など実績多数。国内外のプライベートエクイティファンドに対しての投資アドバイザリ業務、事業評価(ビジネスデューディリジェンス)、事業提携交渉支援、M&A戦略、製品市場戦略など経験豊富。百貨店向けプライベートブランド開発では同社のPBを最高益につなげ、大手レストランチェーン、GMS再生などの実績も多数。東証一部上場企業の社外取締役(~2016年5月まで)
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