アルペン 製造小売化から生まれたB2B新事業をスタート

2015/02/06 00:00
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 アルペン(愛知県/水野泰三社長)は、2015年6月期第2四半期決算を発表した。

 連結の売上高は1055億9400万円(対前期比3.6%増)、営業利益は18億8100万円(同37.3%減)、経常利益は26億5400万円(同28.9%減)、四半期純利益は11億9500万円(同24%減)と増収減益。同時に通期決算の下方修正予想も発表された。

 

「厳しい決算だった」と顔をしかめるのは水野社長だ。

 

 2014年4月の消費税増税前は、単価の高い商品の動きは好調だったが、節約傾向から客数は減少し、駆け込み需要は大きくなかった。増税後も客数減少が継続。円安による原価高騰を価格に転嫁したことで1点単価は上昇したが、買上点数が減少し、効果は相殺された、という。

 

 カテゴリー別では、夏場の多雨と気温低下などの天候不順の影響で「アウトドア」(マリン用品含む)が対前期比11.5%減と不調だった。

「ゴルフ」は、増税後の買い控えに加え、2013年に発売されたダンロップスポーツの「XXIO」(ゼクシオ)の大ヒットの反動を受け、同3.5%減に終わった。「XXIO」の反動減は2015年3月までは続く。

 

 しかしながら、製造小売化を進めるアルペンにとって、明るい材料はふんだんにある。

 

 現在、最も期待を寄せているのは、靴ひもの代わりにワイヤーレースを巻き取るダイヤル(TGF:特許申請中)を搭載したゴルフシューズだ。ダイヤル操作によって、均一な力でシューズを締め付け、しっくりとしたフィット感を実現。「2秒で履いて1秒で脱げる」のキャッチコピーで訴求を繰り返し、同社のゴルフ専門店である「ゴルフ5」ではゴルフシューズの売上高構成比率が60%を超えた。

 価格は「TIGORA  メンズ・ソフトスパイク」(1万1990円)、「Kissmark レディス・ソフトスパイク」(9999円)とリーズナブル。この技術を転用した「TIGORA ウォーキングシューズ」(9999円)なども販売している。

 

 また同社は、TGFの技術をシューズメーカーに販売することでB2B(企業間取引)の商売もスタートさせている。すでに、ブリジストンスポーツは「PHYZ」(ファイズ)にTGFを搭載。またキャロウェイゴルフがTGFを搭載したシューズを「アーバンスタイル」として製品化したところ、石川遼プロが着用。2014年末、「アーバンスタイル」は、国内ゴルフシューズの売上第一位の座を4週連続でキープした。

 

「TGFの技術をディファクトスタンダード(業界標準)にしたい」と水野社長は意気込みを語っている。

 

 さらには、「ランニングシューズ」(対前期比12%増)、「コンプレッションインナー」(同10%増)、「硬式テニス用品」(同15%増)など好調なカテゴリーも少なくない。

 とくに「硬式テニス用品」は、長年にわたって低迷を繰り返していたが、錦織圭選手の大活躍が市場を刺激して活性化。使用モデルラケットの「ウィルソンSTEAM95」などが大きく動いた。

 

 出店は、スポーツ専門店「アルペン」(78)、大型スポーツ専門店「スポーツデポ」(135)、ゴルフ専門店「ゴルフ5」(201)、シューズ専門店「ミフト」(8)の4業態を年間20~25店舗のペースを基準に開発を進める(カッコ内は現在の店舗数)。

 

 そして対前期比11%増と好調をキープするネット販売も新規モールへの出店が続々だ。

 従来の「楽天」「amazon.com」「ヤフー ショッピング」に加え、「ポンパレモール」「Dena SHPPING」や「auショッピングモール」への出店も果たした。

 

 さて、2014年度の日本のスポーツ市場は対前年度比2.7%増の1兆8463億円と目される。

 少子高齢化と人口減少の中で決して大きな成長を望めない市場にあってアルペンは、新しい成長戦略を描く。

 

 なお、下方修正後の通期業績予想(連結)は、売上高2248億5300万円(対前期比6.4%増)、営業利益60億1000万円(同9.1%減)、経常利益73億4000万円(同9%減)、当期純利益31億9000万円(同33.1%減)となっている。
 

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