“作者”亡き今も進化し支持を得る「ダイソー」 矢野博丈さんの訃報を受けて思うこと

森本 守人 (サテライトスコープ代表)
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今も大切にしているもの

 矢野さんが「恵まれない」と言った商売は今、どうなっているかを確認するため、最寄りのダイソーへ行ってみた。

 近年、大創産業が徐々に店数を増やす新型店「Standard Products 京都四条通店」である。京都のメーンストリート、四条通に面し、連日、地元客だけでなく、外国人を含む観光客で賑わっている。

「Standard Products 京都四条通店」
大創産業が徐々に店数を増やす新型店「Standard Products 京都四条通店」

 1階はタオル、食器、化粧品、文房具、園芸用品といったカテゴリーの商品が並ぶ。いずれも色、質感、デザイン、産地などにこだわり、陳列も工夫、ライフスタイルの提案を強く感じる。価格は税抜300円、500円、700円、中には1000円以上するものもある。

 一方、2階は従来型のダイソー。価格は100円が中心で、日用品、雑貨のほか、刷毛やドライバー、防虫ネットなどホームセンター商材も揃う。どのお客も上下階を行き来しながら、商品を手に取り、楽しんでいた。

 せっかくなので、目新しい商品が多い1階で買い物をすることにした。品定めの末、まず選んだのは「2WAYパソコンケース縦型 13インチ グレー」。クッションが入っているため、安心してノートPCを入れられる。色もウグイス色っぽいグレーでスタイリッシュ。バッグインバッグとしても使おう。価格は税抜500円。通販サイトで見ると、同様の商品が3〜10倍の価格で売られており、それらと比べると非常にコスパが高い。

ダイソーのパソコンケース
買った商品のひとつはパソコンケース(税抜500円)。コスパ抜群だ

 もうひとつ買ったのは「インテリアLED」で、インテリアや間接照明として使うライト。早速、事務所に設置すると、殺風景な室内が急におしゃれ空間に変身した。税抜700円。この値段で気持ちがリフレッシュできるならずいぶんお買い得だ。

ダイソーの「インテリアLED」
「インテリアLED」も購入した。事務所に設置すると殺風景な室内が急におしゃれ空間に変身した

 今回、偉大な創業者の死去が、ビジネスに与える影響を案じながら、あらためて売場を隈なく歩いた。とくに1階は、付加価値型のアイテムの存在感が増し、確実に100円ショップの進化を確認できた。

 今も「サザエさん」や「ちびまる子ちゃん」が愛されているように、“作者”である矢野さん亡き後も「ダイソー」は人々に支持され続けているのだと感じた。

矢野さんから「キミにはこれが似合うよ」といただいたネクタイ
矢野さんから「キミにはこれが似合うよ」といただいたネクタイ。今も大切にしている

 かつての取材時、矢野さんからいただいた、あるものを今も大切にしている。私の顔と色味を交互に見ながら、「キミにはこれが似合うよ」と言って手渡してくれたネクタイだ。もちろん100円。ダジャレ好きでシャイ、その中にも、経営の本質をつく鋭い発言を交えての会話は楽しく、貴重な経験だった。

 大変、お世話になりました。ご冥福をお祈りいたします。

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記事執筆者

森本 守人 / サテライトスコープ代表

 京都市出身。大手食品メーカーの営業マンとして社会人デビューを果たした後、パン職人、ミュージシャン、会社役員などを経てフリーの文筆家となる。「競争力を生む戦略、組織」をテーマに、流通、製造など、おもにビジネス分野を取材。文筆業以外では政府公認カメラマンとしてゴルバチョフ氏を撮影する。サテライトスコープ代表。「当コーナーは、京都の魅力を体験型レポートで発信します」。

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