「分かりません」は打ち切りのサイン

2011/05/03 06:27
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 もう15年くらい前の話になる。

 倒産の危機に瀕したある小売企業のメーンバンクが融資を打ち切るという噂を耳にして、その真偽について、都市銀行の広報室に取材に出かけた。

 

 「分かりません」。

 

 そっけない答えが返ってきただけだったが、「打ち切る」ものだと私は理解した。

 

 理由は簡単だ。

 銀行広報室の私の問いに対する回答は、「打ち切る」「打ち切らない」「分からない」の3つしかない。

 

 もし、「打ち切らない」のであれば、「打ち切らない」と否定しこれまでの体制を継続することを明言すればいい。旧体制維持で迷惑がかかる企業や人間は、その時点ではほぼいなかった。

 

 一方、「分からない」という答えは、隠された何かがあるということを表している。「打ち切らない」と言い切れない何かがあるのだと考えるのは普通だ。

 だから噂は本当であり、「打ち切る」に違いないと確信した。

 実際、その数カ月後には、打ち切りの事実が明らかになった。

 

 私が取材した広報担当者は、その銀行に勤める私の友人と同期入社があることが分かったので、後日、当時の対応の舞台裏について聞いてもらった。

 結果は、私の読み通りで、その時点で「打ち切る」ことは決まっていたが、まだ出したくないので「分からない」と答えていたのだという。

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