三和酒類物語

2010/08/15 19:34
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 帝国データバンク福岡支店(福岡市)によれば、2009年の全国焼酎メーカー売上高ランキングのトップは549億円の三和酒類(大分県宇佐市/和田久継社長)で7年連続。「下町のナポレオン」として知られる麦焼酎「いいちこ」をはじめ、清酒、ワイン、ブランデー、リキュールなどを生産している。

 

 三和酒類の設立は1958年。

 零細な酒蔵3社が共同で清酒用瓶詰め機械を購入したところから始まった。

 手詰めを機械詰めに切り替えることで3社はコストダウンの恩恵を得たものの、相乗効果を生み出すまでには至らず、商品競争力にはつながらなかった。「清酒生産の南限は大分県」と言われており、温暖な気候は清酒醸造には、もともと向いていなかったのだ。

 

 そこで、3社は合併し、企業規模を拡充する途を選択。三和酒類として再スタートを切った。酒蔵3社が蓄積してきた技術を出し合いながら、地場産品の大麦を活用し、主力商品として麦焼酎の生産に乗り出した。

 

 ところが九州は芋焼酎が盛んなエリアで麦焼酎を受け入れてくれない。

 営業エリアは、必然的に東進を強いられた。広島県から関西、そして関東と今まで清酒中心に飲まれてきた地域に分け入った。すると、清酒に飲み慣れた消費者から「軽くて飲みやすい」と評判になり、麦焼酎が売れるようになっていった。

 

 広告宣伝活動にも積極的で、テレビコマーシャル開始は1986年から。1987年、『時は今、君の中』を起用して以降、CMソングはビリーバンバンとメンバーである菅原進さんの楽曲を使ってきた。2009年発売の『いいちこ日田全麹』では、ビリーバンバンの『また君に恋してる』を演歌歌手の坂本冬美さんがカバーしたものを使用。映像には、的場浩司さんが扮する武士風の人物が登場している。

 

 “清酒醸造南限の地”でブランド力もない零細な業者が、1社では生き残れないために3社で合併し、地場産品を活かして麦を焼酎に加工し、新しいマーケットを創造したことで日本一の焼酎メーカーになる――。

 市場の変化に果敢にチャレンジし、ブランドを形成し積極的に営業展開をすれば、どんな地域に本社があっても日本一の会社を創ることができるという格好のケーススタディだ。

 

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