焦点:日米通商交渉、スタートは2月以降にずれ込み 米政府閉鎖響く

2019/01/29 09:54
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日米通商交渉
1月28日、複数の関係筋によると、自動車や農業が主要なテーマとなる日米新通商交渉の開始が大幅に遅れる見通しとなった。早くても2月中のスタートになるとみられ、一部では3月までずれ込む可能性を指摘する声も日本政府内で上がっている。写真はニューヨークで2016年11月撮影(2019年 ロイター/Andrew Kelly)

 

[東京 28日 ロイター] – 複数の関係筋によると、自動車や農業が主要なテーマとなる日米新通商交渉の開始が大幅に遅れる見通しとなった。早くても2月中のスタートになるとみられ、一部では3月までずれ込む可能性を指摘する声も日本政府内で上がっている。米政府閉鎖が35日間に及び、米側の態勢整備が遅れていたことが指摘されている。一方、日本側では今夏の参院選をにらみ、交渉遅延を歓迎する声も聞かれる。

 

 昨年9月の日米首脳会談で、両国間における通商交渉を開始することが決まっていた。米通商代表部(USTR)は昨年12月21日に対日交渉の要求項目を公表しており、米国の法制度上は、今年1月20日から日米交渉が始められる状態となっている。

 

 しかし、米政府閉鎖の影響で、日本側の交渉関係者が電子メールを送っても返答がない時期もあり、米側の交渉準備に遅れが目立っていた。

 

 また、ある関係者は、スイス・ダボスで1月22ー25日に開かれていた世界経済フォーラム(ダボス会議)で、安倍晋三首相とトランプ米大統領が会談し、日米通商交渉が、その場で事実上のスタートを切る可能性も検討されていたが、トランプ大統領がダボス会議を欠席し、実現にこぎつけることができなかった。

 

 ただ、日本側には、交渉開始のずれ込みを歓迎する声もある。米国から厳しい対日要求が突きつけられれば、今年7月とみられる参院選で与党の打撃になりかねないためだ。

 

 一部では、交渉開始が6月ごろまでずれ込み、自動車や農産物などでの米側の具体的な要求内容が、7月の参院選まで明らかになることがなければ、政府・与党に有利に働くとの思惑も取りざたされている。

 

 だが、日米交渉にとって、1つの大きな節目と意識されている「イベント」の日程は変更されていない。それは、安全保障上の懸念を理由に自動車輸入に対して追加関税を課すかどうか、米商務省が判断を示したうえで、トランプ大統領に対し報告書を提出する2月19日の期限だ。

 

 もし、商務省が高関税を日本車に課すという「勧告」を報告書に明記してトランプ大統領に提出すれば、日本からの対米自動車輸出にとって、大きな「脅威」になるのは間違いない。

 

 USTRが米議会に提出した対日交渉での要求項目をみると、年間7兆円の対日貿易赤字削減を重視する姿勢を鮮明にしている。

 

 対メキシコ・カナダ交渉では、自動車に追加関税を課す可能性を掲げて数量規制の受け入れを勝ち取った。日本に対しても「交渉が始まったら、(対米輸出の)数量規制を言い出すだろう」(経済官庁幹部)とみられている。

 

 現時点で「米国から日本に対して数量規制の要望はない」(日本政府の交渉関係者)とされるが、ある政府・与党関係者によると、一部の米政府関係者は昨年のある時期、内々に年間174万台(2017年実績)の対米自動車輸出を110万台程度に減らして欲しいと述べていたという。

(竹本能文 編集:田巻一彦)

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