トライアルグループが「スマートカートの外販」を本格化できた理由

高浦佑介 (ダイヤモンド・ホームセンター編集長)
雪元 史章 (ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長)
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外販を後押しした2つの”ポジティブな背景”

将来的には海外企業への外販も視野に入れる
将来的には海外企業への外販も視野に入れる

 そして今年10月、トライアルグループはスマートカートのシステムをトライアルグループ外に本格販売を開始することを発表。同時に、製品名称をスキップカートへ変更し、ブランドを刷新した。スキップには「レジ待ちをスキップする」という機能性と「お客さまがスキップするような楽しい買物体験」という情緒性の2つの意味を込めた。

 このタイミングで外販の本格化に動いた背景は大きく2つある。

 1つは、自社グループでの効果検証でポジティブな結果が得られたことだ。最新のデータで、スキップカートの利用率は平均26%(※2023/9/25~10/25の9時~21時までの実績)、最も高い店舗で44.8%。スキップカートの利用者は非利用者よりも来店頻度が13.8%高いことがわかっている。

 2つめは、POSシステムとの接続の問題に解決の見通しが立ったことである。この課題解決はチャネルパートナーとの連携によるところが大きい。22年9月には東芝テック(東京都/錦織弘信社長)と業務提携し、共同プロジェクトを開始。小売企業側のPOSレジとスキップカートのシステムを連携できるようにした。 

 「これまでグループ外の企業は1、2店舗単位で実験することはできたが、全店や多店舗で展開するにはシステム接続が障壁になっていた。チャネルパートナーとの提携によってそこがクリアになり、本格的に外販できる体制が整った」と田中取締役は説明する。
すでに食品スーパー、ドラッグストアの大手チェーンから引き合いがあるという。

 まずは国内流通業の変革を実現し、将来的には海外展開も視野に入れる。Retail AIを中心とした、トライアルグループによる流通革命はまだ始まったばかりだ。

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記事執筆者

高浦佑介 / ダイヤモンド・ホームセンター編集長

2010年東京大学文学部卒業、12年同大学院修士課程(社会心理学)修了。14年ダイヤモンド・リテイルメディア入社。『ダイヤモンド・チェーンストア』誌の編集・記者を経て、19年4月より現職。

記事執筆者

雪元 史章 / ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長

上智大学外国語学部(スペイン語専攻)卒業後、運輸・交通系の出版社を経て2016年ダイヤモンド・フリードマン社(現 ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。企業特集(直近では大創産業、クスリのアオキ、トライアルカンパニー、万代など)、エリア調査・ストアコンパリゾン、ドラッグストアの食品戦略、海外小売市場などを主に担当。趣味は無計画な旅行、サウナ、キャンプ。好きな食べ物はケバブとスペイン料理。全都道府県を2回以上訪問(宿泊)。

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