パジャマスーツから高価格帯まで!AOKIがヒット商品を連発できるワケとは

油浅健一
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柔軟性を支える広い視野と事業の多角化

 スーツメーカーとしては厳しい市場環境を見据え、2032年までにビジネス4:カジュアル3:レディース3へのシフトを計画。広い視野で状況を俯瞰しながら市場に切り込むスタンスは、生き残るための進化を遂げるうえで理想的といえる。

 いまやAOKIグループではファッション事業以外が4割を占める多角化もまた、AOKIグループの柔軟性を力強く支える要素だ。複合カフェの「快活CLUB」「自遊空間」、カラオケの「コート・ダジュール」、24時間営業のフィットネスジム「FiT24」、ブライダル事業の「アニヴェルセル」は実は同社のグループ。その合計店舗数は800を超え、ファッション事業の約600店舗を大きく上回っている。

 ともすればピントがぼやけがちになるのが多角化のデメリットだとすれば、他の事業で補完ができるという基盤の強さがメリット。スーツ市場が縮小する中でも、斬新なアイディアで、ときに市場を掘り起こし、新規開拓もする懐の深さは、多角化のメリットを存分に生かした余裕から生まれるものなのだろう。

 市場の縮小に加え、カジュアル衣料分野からの参入組も増え、ますます先行き不透明なスーツ市場。二極化とボーダレスが大きなトレンドだとすれば、この先は独自の製造ノウハウがより際立つことになる。古参メーカーにとって、そこに商機があることは間違いない。あとはいかに世間と会話をし、最適な施策を最適なタイミングで打てるかが生き残りへの分岐点となる。

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