イトーヨーカドー全店トライアルで効果発揮!凸版印刷の「未来のチラシ」とは?

ダイヤモンド・リテイルメディア 流通マーケティング局
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未来のチラシ

個人消費の伸び悩みや嗜好の多様化に加え、新型コロナ禍でECとの競合、巣ごもりによる需要の変化など小売業はここ1年で大きな市場変動に直面した。さらにDXやAI活用などデジタル化の波も押し寄せる。そうした変化の中でも、チラシの効果に対する期待は大きい。消費者にとっても、特売情報が掲載されたチラシが購買のきっかけになるというスタイルは変わらない。チラシの一覧サイト「Shufoo!」を運営する凸版印刷はこのほど、新たに「未来のチラシ」を開発、イトーヨーカドー全店でのトライアルを実施した。

EDLP、定番商品の訴求に活用

凸版印刷 DXデザイン事業部ビジネスアーキテクトセンター 事業企画本部本部長山岸 祥晃 氏
凸版印刷 DXデザイン事業部
ビジネスアーキテクトセンター 事業企画本部本部長
山岸 祥晃 氏

 「未来のチラシ」は凸版印刷とスコープ(東京・千代田区)が共同開発した。商品をテーマごとに訴求する紙やWeb用のチラシ製作サービス「ハッシュタグチラシ」、チラシの理解を促進する動画製作サービス「動画チラシ」、テーマに該当する月間特売商品を表示できる「パーソナルDBチラシ」の3つで構成するサービスだ。

 一般的なチラシは、新聞の折り込み広告として消費者に届けられてきた。近年、新聞購読数の減少やECの台頭、消費者嗜好の多様化などが進んだが、いまだ特売情報は重要であり一定の効果は期待できる。しかしそれ一辺倒のチラシばかりでは、効果が限定的になってきたという。さらに新型コロナ禍で、消費者の購買パターンが変化、ECやネットスーパー利用の拡大、店舗側でも特売チラシによる来店の集中を避けたいという思惑も働きチラシ施策を変更するケースも出てきた。

 「もはや特売チラシではなく、低価格戦略としてEDLPをアピールしたいという流通小売は多い」と凸版印刷の山岸祥晃・DXデザイン事業部ビジネスアーキテクトセンター事業企画本部本部長はチラシを巡る状況の変化を語る。消費者はチラシがなくても、SNSの情報やWebサイトに掲載された商品、店舗アプリからのレコメンドなどさまざまなタッチポイントで購買のきっかけを得ている。むしろ小売側としては、継続的に低価格で提供できる定番商品の販売量を高めたい。特売商品は客寄せのために重要だが、比較的利益の取れる定番商品のほうが供給量も安定し収益も上げやすいという思惑もある。

チラシを動画化したコンテンツも提供

 そうした目的から「未来のチラシ」では、店頭に並べられた商品をさまざまな基準でグループ化、テーマ付けして価格以外にもレコメンドする理由や、商品の差別化ポイントなどを一目で理解できる「ハッシュタグチラシ」を提供する。

 「ハッシュタグチラシ」はWebやSNSで日々交わされる情報のハッシュタグをAIにより抽出し、人為的に訴求ポイントとして理解しやすいテーマを設定し、それに沿った商品をチラシに掲載する。紙媒体のチラシとして展開することも可能だが、もちろんWebやSNSなどでのデジタル媒体でも展開できる。春ならば「#花見」や新型コロナ禍による「#リモート」など、その時のテーマを選定して商品をアピールできる。さらに凸版印刷が提供する動画製作サービス「movring(モブリン)」を使って、チラシの動画化も可能で、「低価格・短納期でチラシの動画化が可能で、より視覚的に商品を訴求できる」(山岸氏)点で、「動画チラシ」に掲載することで売りたい商品を強力にアピールする。

 「パーソナルDBチラシ」は、「ハッシュタグチラシ」から、消費者が気になるテーマにアクセスし、そのテーマに該当する月間特売商品を表示するデジタルチラシ。消費者の要求するテーマ別の商品を、チラシに未掲載の商品を含めて一覧表示することが可能で、店の品揃えを伝える機会を提供するほか、顧客情報などとデータを連携した個人の嗜好に合わせたテーマ限定チラシの提供も可能になる。

未来のチラシ作成フロー

販促業務支援システムの機能強化も実施

 DXやAIなど最新のデジタルテクノロジーの活用を検討する流通小売も出てきた。DXは業務の仕組み、流通小売なら基幹業務だけでなく取引形態や店舗運営まで事業全体を見直すことが不可欠になり、AIを使って市場や需要動向分析を行う場合でも、それを使えばすぐに収益に直結するわけではない。デジタル化が進み、CRMやGISによる商圏分析、アプリ開発などさまざまなテクノロジーを導入しても、それらが連携できずサイロ化しているケースも少なくない。

 凸版印刷でも販促業務支援システム「PROMO CORE(プロモコア)」で、販促の多様化やデジタルシフトに対応したアップデートを実施した。この中でも特売によらない個別化されたプロモーション、ECやBOPISなどの変化に対応し、業務フロー時間軸での商品情報の収集やデジタル媒体・メディア対応の強化を図った。「共通のDBからデータオリエンテッドな展開を図る仕組みが求められている」と山岸氏は語り、それがDXに必要なことだとしている。

 その一方でチラシという極めてアナログ文化も残っている。流通小売にとってもチラシの効果は過去の経験からも捨て難いし、印刷を手掛ける凸版印刷にとっても重要なビジネス分野だ。しかし市場環境は変化している。消費者のタッチポイントはデジタル利用が増え、社会全体もデジタル化が進む。そこで「PROMO CORE」の機能強化の一環が、「未来のチラシ」の提供である。

「モノからコト」への価値の変化に対応

イトーヨーカ堂向けのチラシ「未来のチラシ」
イトーヨーカ堂向けのチラシ

 「市場ではモノからコトへと目的が変化している。チラシも同様で消費者にどのような価値を提供できるか、あるいはチラシ自体にどのような価値を与えるか。単に特売品を一覧で見せるだけでなく、価値を高めることが目的」と山岸氏は「未来のチラシ」の意義を強調する。

 今回、凸版印刷では「未来のチラシ」のトライアルを、2月から3月末までの2か月間、一部店舗を除きイトーヨーカドー全店で実施した。その効果として掲載したEDLP商品の売上アップが確認されたという。「未来のチラシ」という新たなタッチポイントに消費者が反応したわけだ。

 凸版印刷ではイトーヨーカドー全店でのトライアルを継続する。その効果から、本格展開のフェーズに入ったといえるかもしれない。さらに他のGMSや食品スーパー、ドラッグストアなどへの展開も進めていくという。それに加えて、今後はライブコマース機能や商品レコメンド機能、対話型検索機能などより使いやすく、価値を高めた機能強化を進めていくとしている。

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