盗撮、反社チェック… 小売店における犯罪リスク低減への対策を解説!

西尾 晋(エス・ピー・ネットワーク執行役員・総合研究部担当/主席研究員)
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② 駐車場における犯罪リスクにも注意を

 次に駐車場における犯罪リスクについても触れておきたい。駐車場内の駐車車両に関する対策は、各社さまざまである。一般的には利用者以外の不正駐車や、車内熱中症などの体調不良者の注視のほか、ハザードランプがついたままの車両所有者への放送は、比較的多くの企業が行っていると思われる。しかし、駐車場にはさまざまな犯罪リスクが潜んでいることも忘れてはならない。

 たとえば、利用者同士の衝突事故や車上荒らしだけではなく、駐車場に停車中のクルマをねらった強盗事件や詐欺事件も発生している。ここでいう詐欺事件とは、たとえば、実際には車に接触をしていないのに、降車時や乗車時にドアが車にぶつかったと因縁をつけて、修理代を騙しとるような事案である。

 そのほか、駐車場を薬物の売買の場として利用されるリスクもある。実際に、過去には地方の高速道路のパーキングエリアなどで薬物の売買が行われていたケースもある。大型の店舗や商業施設では、大きな駐車場を併設しているケースも少なくない。その分、死角や暗い場所も多く、どれが誰の車かは一見して分からないため、複数人が車に乗っていたり、荷物の積み込みを装って複数人が集まっていても、違和感を覚えづらい。これが逆に薬物売買には格好の場所として利用されるリスクを生むことになる。

 駐車場には、事故でもない限り警察車両が立ち入るケースはあまりなく、薬物の売買に大きな駐車場は選ばれやすい。そのほかにも、前述した盗撮リスクも駐車場に潜んでその映像を確認していたり、ナンパや尾行による性犯罪などを目的として来場者を物色して追尾しようとしていたりするケースもある。

 店舗側は、このような大型駐車場の犯罪場所化のリスクを踏まえて、定期的に巡回するとともに、車内に人がいる場合には、積極的に声がけを行うのが望ましい。

 長時間の駐車車両にずっと人が乗っている場合などは、警察に相談して、警察官による職務質問をしてもらうなど、駐車場の管理体制も強化しておくといいだろう。

 「ここまで警戒か必要なのか」と疑問を感じる方もいるかもしれないが、各種の犯罪目的で駐車場に人が集まれば、それだけ店舗の犯罪リスクや店舗利用者の犯罪被害のリスクが高まってしまう。その上、SNSなどによる各種の情報発信により、その状況を放置している企業への風評リスクにも発展していくことを看過してはならない。

③出店者やテナントには反社チェックを

 テナントや、屋台形式の店舗が入居する際に気をつけなければいけないのは、反社会勢力(以下、反社)でないかどうかのチェックだ。 実際にあったケースを紹介しよう。あるスーパーマーケットの駐車場内に長年にわたり出店した焼き鳥店のオーナーが、実は前科のある暴力団員であり、たまたま警察官が店舗を訪れた際に発覚した。そのほかにも、店内に出店していた携帯アクセサリーの屋台が、実際は暴力団関係者により運営されていたというケースがあった。

 こうした事態を防ぐために、短期の場合も含め、店舗に出店・入居する企業やオーナーに対してきちんと反社チェックをしていくべきだ。案外実施している企業は少ないのではないだろうか。

 反社チェックを十分せず、先述したような出店を許すと、そこでの収益が暴力団組織に上納され、暴力団の活動を助長・支援しているかたちになることに注意しなければならない。暴力団の資金活動に間接的に関与して、暴力団の活動を助長していることになってしまうからだ。そうした場合、各都道府県で制定されている暴力団排除条例に抵触する可能性があり、コンプライアンス上のリスクを抱えてしまう。

 暴力団と癒着して事業活動を行っていた企業や反社会的勢力が実質的に経営していた企業や、反社会的勢力に乗っ取られた企業などは、銀行からの取引停止といった事態を招き、倒産に追い込まれたケースも過去には相当数ある。そのことを忘れてはならない。

 大手の小売事業者やコンビニエンスストア事業者は、企業が提供する反社データベースを使用し、反社チェックを積極的に行い、反社リスクに対する備えをしている。現在、こうした反社チェックは必須であることを改めて認識して欲しい。

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