ファストリ業績絶好調も…日本の大衆から乖離するユニクロはどこへ行く?

小島健輔 (小島ファッションマーケッティング代表)
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コロナ前比で平均15%近くの価格上昇

 季節進行や在庫調整の値引き販売による上下はあるものの、コロナ前の19年からは平均して15%近い値上げになっており、客数もほぼ相応に減少したのが実態だ。客数には外国人観光客も含まれるから(ユニクロは開示していないが、全国百貨店の23年のインバウンド売上比率は6.43%)、国内客の減少は前述した数字より大きいはずだ。
※定番を継続販売するユニクロは品番単位の売上進行を週サイクルにデータ蓄積し、直近の販売消化進行を見て週サイクルで在庫コントロールしており、チラシの配布サイクルに合わせてシーズン中にキックオフ(短期の小幅値引きで期間終了後は元の価格に戻す)など煩雑に売価変更している

 クリエイターなどとのタイアップ企画商品も高単価品は消化に手こずるケースもあって捌けるまで値引きを繰り返しているから、ユニクロ顧客の価格抵抗感は相当に根強い。

 「低価格高品質な国民的カジュアル」としてメジャーポジションを確立した「ユニクロ」も近年の値上げで庶民層には手の届きにくい「中産階級向け高機能高品質ナショナルブランド」に変貌しつつある。

 従来の価格ポジション(アッパーポピュラープライス)を支持して来た庶民層は値下げしないと買わなくなり、もっと手頃なストアや激安の中国系越境ECSHEINTEMUなど)に流れる「ダウンサイジング」が進行していると推察される。

 「ユニクロ」よりいちだん手頃なロワーポピュラープライスの「しまむら」が、付加価値PB(プライベートブランド)を拡充しても基本商品の値上げは抑制して「庶民価格」を維持し、19年比でも客数を伸ばして既存店売上を大きく伸ばしているのとは対照的だ。

  実質賃金の減少が続いて消費が冷え込んだ23年秋口以降は流石に客数が減少に転じて売上伸び率も鈍化しているが、コロナ前からの伸び率は客数でも売上でも突出しており、衣料品の「庶民価格」はインフレ下でも動いていないようだ。

 

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記事執筆者

小島健輔 / 小島ファッションマーケッティング 代表

小島ファッションマーケティング代表取締役。洋装店に生まれ、幼少期からアパレルの世界に馴染み、業界の栄枯盛衰を見てきた流通ストラテジスト。マーケティングやマーチャンダイジング、店舗運営やロジスティクスからOMOまで精通したアーキテクト。

著書は『見えるマーチャンダイジング』から近著の『アパレルの終焉と再生』まで十余冊。

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