ルミネ新宿4館にみる「棲み分け」と「女性目線のマーケティング」の妙

2025/02/03 05:59
小島健輔(小島ファッションマーケッティング代表)
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伸び悩むアパレル業界でも、独自のマーケティングで変貌していく市場を捉えて業績を伸ばす「ルミネ新宿」。ルミネ1、ルミネ2、NEWoman、ルミネエスト(元の新宿ステーションビル)、4館の棲み分けストーリーが絶妙で、アパレルマーケット最前線の縮図を見るようだ。

4館で売上1100億円越え!
全国ナンバーワンの駅ビル

 「ルミネ新宿」は新宿駅南口の「ルミネ1」、「ルミネ2」を合わせて営業面積19406㎡、20243月期売上4733100万円。甲州街道の向こう側に16年に開業した「NEWoman新宿」(営業面積7883㎡/243月期売上1814400万円)、東口の「ルミネエスト」(営業面積19112㎡/243月期売上4716200万円)を合計した「ルミネ新宿4館」は営業面積46401㎡、243月期売上11263700万円の全国ナンバーワンの駅ビルだ。

 「ルクア」と「ルクアイーレ」(元のJR大阪三越伊勢丹)を合わせた「ルクア大阪」(営業面積54000㎡、243月期売上883億円)が続くが、坪当たりの販売効率は「ルミネ新宿4館」の年間801万円に対して「ルクア大阪」は年間540万円と7掛けにも届かない。

 253月期は、「ルミネ新宿」(12のみ)が412月で9.3%増(インバウンド比率約8%)に対し、インバウンド(月によって1014%)や梅田地区の商業施設新規開業が押し上げた「ルクア大阪」は410月で19.5%増と差を詰めているが、そのペースでも通期売上1055億円ほどで、通期で1200億円を軽く超えると見られる「ルミネ新宿4館」には及ばない。

 「ジェイアール名古屋タカシマヤ」も24年通年で前年比12.9%増の2136億円に達しているが、百貨店部分を除く駅ビル部分(ゲートタワーモール/営業面積32000㎡)は580億円前後と推計されるから、「ルミネ新宿4館」には遠く及ばない。

 売上で突出する「ルミネ新宿4館」はファッションテナントの開発・導入でも全国の駅ビルをリードしており、「ルミネ新宿4館」の販売成績を見て他の駅ビルが後追いする図式が定着している。

 そんな「ルミネ新宿4館」のマーケティングは女性のライフスタイル変化を先取りするもので、実に興味深い。

「ルミネ新宿4館」のマーケティング・ミックス

 「ルミネ1」、「ルミネ2」、「NEWoman新宿」、「ルミネエスト」の4館はどのようなマーケティングで棲み分けているのか。

 客層の世代が異なるのに「ルミネ新宿」(「ルミネ1」「ルミネ2」)、「NEWoman新宿」、「ルミネエスト」の年間販売効率はほとんど差がなく、客数×客単価のマーケティング・ミックスが上手く仕組まれている。

 私は何年もの間、毎月、ルミネ新宿4館を一周して定点観測しているから、各テナントの商品政策やVMDはもちろん各館・各フロアの客層の違いも実感しているが、ルミネ新宿4館の棲み分けを以下のように捉えている。

 世代は「ルミネエスト」が一番若く、ジェネレーションZの学生層から20代の社会人(一部はアラサーにかかる)、ついで「ルミネ2」がジェネレーションYのアラサー〜アラフォーのキャリア女性中心の社会人、「ルミネ1」がアラフォー〜アラフィフのキャリア女性中心の社会人(ジェネレーションはYX)、「NEWoman新宿」は「ルミネ1」卒業のジェネレーションX〜ベビーブーマーの成熟キャリア女性中心の社会人とざっくり分けられるが、総じて自活力のある(パートナーの稼ぎに依存しない)キャリア女性が主役であって、各館の女性/男性/カップルの様相は微妙に異なる。ルミネ独特のキャリア女性文化については次に解説するとして、4館の客数と客単価の構図は客層の世代にスライドしており、客数と客単価の掛け算の結果である販売効率は極めて近似している。

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