株価が1年半で約3倍に!パルグループ好調の秘密と抱える5つの課題の解決策とは
パルグループホールディングスの分析と提言
さて、ここまで株式の話をしたが、ようやくここから本題のパルグループホールディングスについて解説していきたい。
前置きを長くしたのには理由がある。まず、同社の驚くべき株価の推移だ。コロナ禍の20年9~11月ごろと比べれば4倍近く、22年4月ごろと比べると約3倍になっているからだ。
これだけの急上昇はあまり聞かない。なお、私と同社の関係では、教育・研修などでお付き合いが少々ある程度。今は退任された元取締役の小路順一さん(家が近所)とは食事をしたこともあるし、デジタルSPAの提案もしたことがあるが、それだけだ。同社についてインサイダーに近い部分の話までは知り得ていない。
しかし、私がコンサルタントとして得意にしている「情報のシナプスによる結びつき、そして、そこから紡ぎ出される物語つくり」を行えば、いろいろな仮説が出てくる(コンサルタントは最終報告書を除き、「仮説」という言葉を使い続ける)。
まず、例の如く「販管費は40%台か」「現金と仮想的に換金後の在庫は対販管費に対してどの程度か」をみていく。同社の場合は、直近の23年3月期の販管費率は45.2%に収められている。
ここまでは、私の論考を読み続けている人であれば、その目的と着眼ポイントは分かるだろう。服は、極めて嗜好性が強く、欲しいものがあれば大ヒットするが、不要だと思われたら過剰在庫の山となる。私の「斜め読み」によれば、「IR・投資家情報」で、やはりでてきたのが「株式分割」だ。これはつい最近の23年の7月に実施され9月から効力を発揮するようだ。したがって、株価の直近の急上昇はこの株式分割とは無関係で、事業との連携を見るべきだろう。ここで過去のIRニュースを眺めていくと、目立つのが「自社株買い」だ。パルグループホールディングスは、上場企業としてかなり「株主を向いた経営」をやっているのだろう、という分析が成り立つ。P/L(損益計算書)も数年分みたが、確かに成長基調ではあるが、そこにあぐらをかくのでなく、さらに余った金は自社株買いで経営の安定化と株主還元を行っているのだろう。
EC比率と雑貨比率がともに40%近い(雑貨は35.8%)という点もユニークだ。
EC化を加速させたという意味では、地方で「再販」の繰り返しで儲ける某社と異なり、トップがよほど強いリーダーシップをもって現場を引っ張っているか、あるいは、数名のデジタルの天才がいるのか、仮説は立つが正確なところはわからない。
いずれにせよ、日本の衣料品全体のEC化率が20%に届かない*なかちょうど40%(23年2月期、対前期比では+2.2Pt増)という構成比をたたき出しているというのは立派だ。
編集部注:日本の「衣料品+服飾雑貨」のEC化率は約21%(21年度、経済産業省)だが、うち服飾雑貨のEC化率が圧倒的に高いものと予測でき、アパレルと服飾雑貨のEC化率を加重平均したものが約21%であるわけだから、衣料品だけに限れば20%を切っているものと、河合氏は推計している。
そうしたなかで、
一方、雑貨は「よく売れる、しかし、儲からない」というものだ。「雑貨のお買い物の楽しみ」は、MD点数と相関する。しかし、ニット、カットアンドソー、布帛の三種しかない衣料品と異なり、雑貨の場合、極論をいえば「雑貨の数だけ工場が散らばる」という事情がある。金型が必要なもの、手作業でつくるものなど、工場形態が一定化しないからだ。
同社が抱える課題について私が読み解き解決策を提言する前に、1つアパレル業界にまつまわる予測をしたい。
それは、今後企業のバリューチェーンは中間流通がなくなるということもそうだが、工場が「アパレルメーカ機能」を持ち、LDP (Landed Duty Paid 輸出国仕向地指定場所までの輸配送)取引が普通になり、24年問題も解決に向かうというものだ。
その理由は以下の通り。今、中国は国を挙げてD2Cで一気に日本を攻めようとしている。これに併せたように、Sheinもドバイへ行ったようだ。そこで、私がデジタル屋であれば、「中国発、日本仕向地向け検収基準売上」(この恐ろしさがお分かりだろうか。自社倉庫にトラックが日に三度もやってきて40%の空気を積んでやまのようなトラックがショッピングセンターに向かって渋滞している絵姿を根元から根絶する改革だ)を可能にするシステムと業務プロトコルを標準化させ、経産省に提案するだろうと思う。
では、いよいよ同社の課題とその解決策を提言したい。
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