カスタマーハラスメント抑止・リスクヘッジに有効!5つの対応策を解説

西尾 晋(エス・ピー・ネットワーク執行役員・総合研究部担当/主席研究員)
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前回は、迷惑行為を含むカスタマーハラスメントへの対応について、現場での対応時のロジック・対応要領に関するセオリーと厚生労働省の「カスタマーハラスメント企業マニュアル」の記載内容に関する問題点を解説した。今回は、前回紹介しきれなかった迷惑行為を含むカスタマーハラスメントの抑止やリスクヘッジに有効な5つの対応策について紹介していく。

sesame/iStock

<対応策①>禁止行為の明示や警告文を活用する

 迷惑行為を含むカスタマーハラスメントへスムーズに対応するため、禁止行為の明示や警告文の活用は有効な手段の一つである。

 なぜ、禁止行為の明示や警告文の活用が重要なのか。それは、その掲示、案内によって「止めて欲しい」という意思表示を明確に行えば、「拒絶の意思表示をしているにも関わらず、当該顧客が自らの判断で迷惑行為を続けた」ため、やむを得ず利用や入館をお断りしたというロジックに持ち込めるからである。さらに、やむを得ず警察対応に持ち込まなければいけない場合、顧客側の言動が悪質かつ意図的なものであるがゆえに事件化に値する事態であることを明確にできる。

 店舗や施設については、管理者が施設管理権を有しており、店舗や施設利用時のルールを管理者として定めることができ、その内容が著しく公序良俗に反するものでないかぎり、利用者はそのルールに従う必要がある。

 禁止行為は、施設などの管理者としてのルールを明示することにつながるため、できるだけ見やすく、なおかつわかりやすいように掲示・案内するのが望ましい。できれば入り口や受付など、入館前に禁止ルールなどを確認できる状況にして、掲示・案内すれば、迷惑行為を含むカスタマーハラスメントへの牽制にもなる。

 また、必要に応じて警告文などを掲示して、迷惑行為などを含むカスタマーハラスメントへの対応を牽制し、または現場での停止指示の際に活用することも、有用な手段である。文言については「お客さまへのお願い」など、あくまで「お願い」の体裁をとっても構わない。以下に例を記す。

例 1 禁止行為(ルール)の明示

次のような行為はおやめください
1.当社スタッフへの暴力・暴言・罵声
2.当社スタッフへの性的な嫌がらせ、セクシャルハラスメント行為
3.当社スタッフを、又は当社関連施設内で、無断で撮影・録画などをすること
4.当社スタッフに対するつきまとい、その他の嫌がらせ行為
5.当社スタッフに対して大声を張り上げるなどにより、他のお客さまのご迷惑となる行為
6.当社スタッフの要請・警告や指示を無視して、他のお客さまにご迷惑をおかけし、又は当社
スタッフの円滑な業務運営を妨げる行為
7.対応できない事象や同じ事象について、当社スタッフに対して、執拗に、又は繰り返し、もしくは長時間に渡って、対応を求めるなど、円滑な業務運営を妨げる行為
8.当社の施設に無断で立ち入り、又は退去要請を受けても立ち退かず、居座る行為

 

例 2 警告文例 ※「お客さまへのお願い」や「私たちの思い」といった表題を付けても構わない

「最近、一部のお客さまから、従業員に対して、度を越えた暴言や暴力行為、長時間にわたる苦情申し立てによる拘束、対応できる範囲を超えた無理(社会通念を超えた)な要求への対応の強要などの行為が頻発しています。
当該お客さまの事情・言い分を執拗に振りかざし、特別扱いを求めるこのような行為は、犯罪行為が行われる場合があるほか、他のお客さまへの対応の時間を無視して執拗かつ長時間に渡り行われるなど、多くのお客さまに当社サービスへのご満足度を高めていただく観点からも、当社としては到底看過できるものではありません。また、安全運行にも大きな影響が生じます。
当社としては、コンプライアンスの観点および、他のお客さまへご迷惑をおかけする事態を回避し、安全な運行を徹底すべく、このような理不尽な行為に対しては、警察その他の関係機関と連携しながら、断固として対応してまいります。」

 

 このように会社として、迷惑行為を含むカスタマーハラスメントへの対応方針・姿勢を明確に掲示・公表しておくことが重要である。最近は、こうした方針をホームページで公表している企業もある。
   
 なお、問題が頻発している「迷惑動画」への対応策として、とくに店内での撮影は許可制にして、店内で明示することを検討してもいいだろう。許可制にすれば、許可を取らなければいけないという牽制効果が生まれる。また、立ち合いや撮影した映像の確認などを行わせてもらう場合があると伝えることで、迷惑動画を撮影しにくい環境を作れる。

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