カスハラ、モンスター客から従業員と店舗の評判も守る!具体的な方法とトーク例

西尾 晋(エス・ピー・ネットワーク執行役員・総合研究部担当/主席研究員)
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前回は、迷惑行為を含むカスタマーハラスメント(以下、カスハラ)や無理難題を申し立てる不当要求は、運営企業に対して、種々の大きなロスをもたらすことを解説した。今回は、実際に迷惑行為やカスハラが発生した場合の初動対応についての4つのポイントについて説明していく。

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<ポイント1> 明確に「止めて欲しい」と伝える

 迷惑行為が発生した際の対応のポイントは、例1にあるように、迷惑行為やカスハラと思われる行為に対して、店長などの責任者が明確に「止めて欲しい」と伝えることである。ルールや警告を無視するような場合は、当該行為は禁止されていること、ルールに反していることであると告げて、止めるように求めるのが重要となる。

例1)カスハラへの対応に関するトーク*1

自分の要求をのませるために、担当者を困らせたり、怖がらせるために、暴言や威圧行為・暴力行為と思われる言動を行っている場合
1.まずは、やんわりと、「止めていただきたい」旨、お願いする
  例:「誹謗中傷は止めていただけますか」
2.それでも続く場合は、警告する
 例:「やめてください。これ以上続けられると、お話させていただくことは難しくなります」
3.それでも続く場合は、警告する
 例:「止めていただけないようなので、これで打ち切らせていただきます」
(対応打ち切りに至るまでのより詳細なトーク例、あるいはその後の対応方法については後述します)

 最初は、カスタマーサティスファクション(CS)を重視し、「止めていただけますか」と、あくまで「お願いする」姿勢でトークするのをおすすめする。それでも迷惑行為やカスハラ行為を止めない場合は、例1内の2のように、改めて「止めてください」と命令・指示調で停止を求め、それ以上続いた場合な警告を行うことが重要だ。

 ここまでで、顧客側に二度にわたり迷惑行為やカスハラ行為停止を求め、警告を行っている。それでも迷惑行為・カスハラ行為を止めない場合は、もはや擁護の余地はない。再三にわたる要請・指示・警告を無視したのは顧客側であり、対応等を打ち切られても、それは顧客側が要請・指示・警告を無視して迷惑行為・カスハラを続けた結果であり、自己責任である。責任者は、従業員の安全や人格の尊厳、ほかのお客の権利や安心を守り、無用な種々のロスを生まないために、当該顧客への対応を打ち切り、場合によってはそれを既成事実として警察対応へと進めればいい。

 実際に迷惑行為やカスハラが発生した場合、まず行いたいのは、以上に述べてきたように当該顧客の言動が、「迷惑行為やカスハラにあたる」と明確にすることだ。そうすれば、顧客側の言動が悪質かつ意図的(故意)なものであり、対応の打ち切りや事件化することの正当性、このような事態を引き起こしたのはあくまで顧客側の「自己責任」だと明確にできる。

 ただし、冷静に判断し、対応するのが重要だ。「迷惑行為やカスハラにあたる」と明確化されるまでは、あくまで「当方に非があり、お客さまにご迷惑をお掛けしている」というスタンスで臨まなければならない。クレームや不当要求・カスハラの場合も、基本的にはCSを重視した「お客さまのご要望には可能は範囲で最大限対応します」という姿勢を維持するのが望ましい。企業の担当者がけんか腰で対応していては、他のお客に与える印象に影響し、風評被害につながることもあるほか、冷静さを失い誤った対応をしてしまうリスクもあるからだ。

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