カスハラ、モンスター客から従業員と店舗の評判も守る!具体的な方法とトーク例

西尾 晋(エス・ピー・ネットワーク執行役員・総合研究部担当/主席研究員)
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<ポイント2> 対応を打ち切るためのロジックの構築

 続いて解説したいのが、迷惑行為やカスハラを続ける顧客への対応を打ち切ったり、警察対応を行ったりするためのロジックをいかに構築するか、いわば理論武装の仕方である。

 自分の要望が通らなかったカスハラ顧客は、対応を打ち切ったり、警察対応に切り替えた場合、企業側の対応を「不適切な対応」「傲慢かつ一方的」とSNSなどで自身の正当性を主張し、企業の対応を批判する場合がある。自身の過失などを棚に上げ、その状況に陥ったことの責任を企業側に「責任転嫁」するのが、迷惑行為やカスハラを行う顧客、いわゆる「クレーマー」と言われる人たちの思考回路なのである。

 そうやって企業側に負い目を感じさせ、自身の正当性を主張して自身の要求に応じさせようとする場合もあるため、その事態を見越して反証できるように企業側はロジックを構築しておくのが重要である。

 具体的に抑えておいていただきたいロジックは、次の通りである。

図 1 カスハラへの対応に関するロジック *1

カスハラ対応事例

 図1のように、対応を打ち切るためのロジックは、「止めて欲しい」という意思表示を明確に行い、「拒絶の意思表示をしているにも関わらず、お客さま自らの判断で当該行為を続けた(当該行為を止めなかった)」という既成事実をつくることである。

 たとえば、セクシャルハラスメントでは、相手が拒絶している行為をおこなえば、その悪質性が問題視され、ストーカーの事案でも付きまといなどをやめるように求めても止めなければ逮捕される。相手が拒絶していることを、執拗に続ければ、当該行為の悪質性や違法性は高まるし、再三の要請・警告を無視した既成事実を作れば、意図的(故意)に迷惑行為やカスハラ行為を続けているのが明確になるため、「そんなつもりはなかった」といった言い逃れも難しくなる。

 こうすることで、「対応を打ち切られたり、警察対応(事件化)されたり、出入り禁止になったのは、あくまで、企業側の要請・警告を無視して、悪質かつ意図的に当該行為を続けた顧客側の自己責任」と言いやすくなるし、企業側としても対応の合理性を担保できる。その上、悪質かつ意図的という点で、刑法などの構成要件に該当する行為は、警察も犯罪として事件化しやすくなる。サッカーのイエローカード→レッドカード(退場)となるルールをイメージするとわかりやすいであろう。

 現場では、どのような段階になったら対応を打ち切っていいのか、警察を呼んでいいのか、出入り禁止にしていいのかなどの判断に悩むことが多い。そのうえ、そのような対応をすれば、先述したようにカスハラをした顧客が、「企業側(担当者)の対応が悪い」と騒ぎ、大事に発展する場合もあるため、担当者としてもお墨付きがなければ対応の打ち切りなどはやりにくい。このような心理状況になれば、カスハラなどの理不尽な行為があっても、毅然とした対応をするのを躊躇し、結果的にカスハラの被害を受けて、精神的負荷も大きくなってしまう。

 そのため、上記のようにロジックを構築し、フロー化して、それを現場で徹底するのが肝要だ。そうすることで、このような現場の担当者の不安や恐怖心を払拭できるというメリットがある。

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