新たな収益源も!一時成長ストップのコンビニが、再び急成長を始めた理由!

大宮 弓絵 (ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長)
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リテールメディアと配送事業を一気に加速

 こうして回復を遂げたCVSだが、すでに国内店舗数は5万6000店を超え、店舗間競争が激化するなか、かつてのような大量出店による成長は難しいことに変わりはない。そんななか各社は、CVSの店舗網を生かした新しい成長施策を始動させており、コロナ禍が収束した23年はその取り組みにアクセルを踏み込んでいる。

 セブン-イレブンは、スマホで受注した商品を最短30分で配送する「7NOW(セブンナウ)」サービスを一気に広げる。現在すでに約5400店(23年5月末)にサービス導入を推奨済みで、これを23年度中には1万2000店へ、24年度には全国の店舗に拡大することをめざす。

 同じく店舗を活用した配送サービスでは、ローソンは「UberEats(ウーバーイーツ)」らデリバリー事業者4社との提携のもと、店舗商品の即時配送の対応店舗を46都道府県3558店舗(23年2月期末)まで拡大している。全サービス提供エリアを合わせた人口カバー率はすでに7割超となっており、さらに対応店舗を増やしていく方針だ。

 そしてCVSの新たな成長領域として業界関係者の耳目を集めているのがリテールメディアだ。全国の店舗網や自社のスマホアプリを“メディア”に、広告やマーケティング事業を展開する。なかでも先行投資に動いているのがファミリーマートだ。細見研介社長は「リテール広告・メディア領域で日本のリーディングカンパニーをめざす」と宣言し、23年にデジタルサイネージの導入店を約1万店へ拡大させる。すでにおよそ4600店(23年6月末)に導入済みで、導入店では買い上げ客数や販売数量が増える効果が出ており、手応えを得ている。

 セブン-イレブンも自社アプリでの広告や、購買データを活用した外部メディアへの広告配信などによる「メディア収入」を、25年度までに30億円を超える規模に成長させる目標を掲げる。同社がまず注力するのが「セブン-イレブンアプリ」での広告配信で、22年9月に専門部署「リテールメディア推進部(現在はマーケティング本部)」を新設し、本格的に事業を開始している。

 全国に店舗網を持ち、多くの人が日常的に来店する業態であるCVSはリテールメディアにおける競争優位性が高いといわれており、同領域において小売業界のなかでもCVSが存在感を発揮していくのか注目である。

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記事執筆者

大宮 弓絵 / ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長

1986年生まれ。福井県芦原温泉出身。同志社女子大学卒業後、東海地方のケーブルテレビ局でキャスターとして勤務。その後、『ダイヤモンド・チェーンストア』の編集記者に転身。最近の担当特集は、コンビニ、生協・食品EC、物流など。ウェビナーや業界イベントの司会、コーディネーターも務める。2022年より食品小売業界の優れたサステナビリティ施策を表彰する「サステナブル・リテイリング表彰」を立ち上げるなど、情報を通じて業界の活性化に貢献することをめざす。グロービス経営大学院 経営学修士

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