ミズノの睡眠市場参入で注目はファッション性×寝具の親和性 「ユニクロホーム」の可能性とは
一方で、西川やエアウィーヴはファッションアパレルではない。消費者から見れば、これらの企業は専門性が高いという位置づけで、実は下着やシューズなどとブランディングの方向性が似ている。
どういうことか?求められる「専門性」について例を出して説明すると、おいしいラーメンを食べたいとき、あなたは寿司屋がサイドメニューでラーメンもつくっている店に入るだろうか?もちろん、価格やスピードなど人には事情があるから、必ずしも寿司屋でラーメンを頼まないということはないと思う。しかし、可能ならラーメン専門店でラーメンを食べたいはずだ。このようなケースはいろいろある。例えば、シューズ、ランジェリー、パンツ(スラックス)などだ。最後にパンツが来ることに違和感を持つ人もいるかもしれないが、イタリアなどではパンツ工場は専業メーカーが担っているのは常識だ。このように、専業メーカーがつくったものでなければ消費者は信用しない、というものが世の中にはたくさんある。
この領域に風穴をあけるためには、自社の開発機能を外出しするより、M&A(合併・買収)や事業提携などで専業メーカーを自社グループに上手に取り込むべきだと思う。
Uniqlo HOMEは売れるのか?
機能性、研究開発に費やすことができる資金量と優れた機能性を持つ企業といえば、ファーストリテイリングが真っ先に浮かぶ。もはや日本を代表する世界企業となったファーストリテイリングはアパレル、キッズ、スポーツ、ハイブランドとのコラボ商品など、繊維という繊維のカバレッジだけで言えばもはや隙間はないように見える。
しかし、ユニクロになくてZARAにあるもの、それはZara HOMEのような業態だ。ユニクロが世界のアパレル企業の一角を担う最大手となり、また、ブランドとしての存在感を増すのであれば、Uniqlo HOME (仮称)があってもよい気がする。実際、同社のMDを丹念に見てみれば、ヒートテックの技術を使った毛布やAIRismの生地を使ったパジャマなど、ピースは揃っている。これだけ全方位に繊維製品を拡張し、ギアの販売もしているのであれば同社の機能性寝具を別業態として出すのは十分あり得る選択のように思える。少なくとも、私は、この期待を絶対に裏切らない会社がつくる寝具業態というものがあるなら、ものすごく興味がある。
そもそも、みなさんはSPA(製造小売)などといっているが、このファーストリテイリングとて、自社工場は、銀座のユニクロトウキョウ向けの東雲の工場のほか、アジアに数軒あるだけで、日本中のアパレル・リテーラーは協力工場での生産がメーンだということを知らない。ファブレスの強みは、ものづくりをすぐに変えられるところにあり、デメリットは直営工場に比べ、プロフィットセンターとコストセンターの差分で価格が高いことだろう。
あれだけ徹底的にマーケティングを行っているファーストリテイリングのことだ。こうした議論は過去遡上にのったことはあろうが、私が提唱する駅ナカ・空港の自動販売機店と同様、いまだに姿を現さない。もちろん、いまのままでも出店余地はアジアにいくらでもあるし、特にアリババグループの手中に陥らないためのチャイナ投資も必要だろう。エキセントリックなことをやっている場合ではないという「選択と集中」の結果かもしれない。
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