佐藤勝人の「本当に強い店」づくり#1 「強い店」の条件とは何か 今めざすべき地域から支持される店

2021/06/15 05:55
    日本販売促進研究所 商業経営コンサルタント 佐藤勝人
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    貧しくなった日本人の消費行動

     それでは、「地域一番店」になるためには何が必要なのでしょうか。それを説明するために、少し日本人の消費行動の特徴についてお話ししましょう。

     ファストファッションに身を包みながら、ブランド物の高級バッグを持ち、高級マンションと安アパートが混在する地域に暮らす、というのは当たり前のようで実は日本ならではのことです。アメリカなどでは下流、中流、上流の棲み分けがハッキリしています。上流の人々は中流・下流の人々が暮らす地域には住みませんし、上流に相応しい品物を、相応しい店でしか購入しません。つまり、アメリカ目線で言えば上流なのか下流なのかわからない、入り乱れた選好をするのが日本人なのです。

     バブル崩壊後、日本人は少しずつ貧しくなっています。目減りしていく給料の中で、「これだけはランクを下げられないもの」にそれぞれがこだわった結果が、この特徴ある選好です。しかし同時に、貧しくなったことで日本人は“モノの価値”がよりわかるようになったとも考えています。

     具体的な例を挙げてみましょう。仮にあなたが、有名なコーヒーチェーンで、一杯500円のオーガニックコーヒーを毎朝買っているとしましょう。しかし、給料が下がり今まで通りには買えなくなってしまいました。あなたはどうするでしょうか。買う頻度を減らしますか?それとももっと安い店に通いますか?

     しかし、似た味で300円のコーヒーでも品質に不安のあるものは買いたくないでしょうし、味が劣っているならなおさらです。つまり、いくら世の中が不況で貧しくなったからといって「安かろう悪かろう」では、お客は買わないのです。一度豊かだった頃に設定された選好の品質やランク、前述のチェーン店によって引き上げられた自分の品質基準や価値基準を、人間はそう簡単に下げられないのです。

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