#18 スーパーの3極寡占化が促した?北海道で先行するメーカー発の物流効率化
北海道で物流効率化が進む2つの必然
こうした共同配送は、17年ごろから社会問題化している運輸業界の人手不足を発端とする取り組みであることは言うまでもありません。同時に北海道の市場特性が他の地域以上にドラスティックな変化を促していることも見逃せない点です。
北海道は人口526万人、面積は8万3450平方キロ。九州と比べると人口は37%、面積は1.8倍で、輸送効率は非常に悪い。しかも北海道の人口の6割は札幌を中心とする道央圏に集中し、旭川、函館、帯広、釧路など他の主要都市は最低でも100キロ以上離れています。
道央圏には政令指定都市・札幌を中心に新千歳空港、苫小牧港という本州からの玄関口が集まっており、大手食品メーカーの多くは北海道市場向けの製造拠点や中核物流施設をこのエリアに置いている。つまり道央圏から道内全域にいかに効率に物を運ぶかは、人手不足の問題いかんに関わらず、最大のテーマであったのです。
もう一つ重要な点は、食品メーカーにとって最大の売り先であるスーパーの寡占化が、全国に先駆けて進んでいることです。帝国データバンク札幌支店のまとめによると、18年度のイオングループ、コープさっぽろグループ、アークスグループの売上高は3000億~3300億円で拮抗。道内のスーパー上位50社の総売上高に占める3大グループのシェアは79%にも達しています。
北海道では、小売業に力がなかった1960年代、物流コストなどさまざまな経費が小売価格に転嫁され、本州に比べ割高な「北海道価格」が形成されていました。3極寡占化が進んだ現在、全国でも最も物価の安い地域に変貌したことは、連載7回目で述べた通りです。
これは売上高3000億円台のボリュームを持つ三つのグループが並び立ち、互いにけん制しながら取引先と条件交渉を行ってきた結果です。メーカーサイドはよりよい条件を出して市場の「79%」との取引につなげるか、すべてを失うか-。このプレッシャーが、北海道を物流改革先進地にしているとも言えるでしょう。
新・北海道現象の深層 の新着記事
-
2021/04/02
#18 スーパーの3極寡占化が促した?北海道で先行するメーカー発の物流効率化 -
2020/12/29
#17 目指すは業界統一? 八ヶ岳連峰経営でついに関東進出を果たしたアークス・横山社長 -
2020/11/27
#16 ニトリvsDCM-かつての「盟友」はなぜ島忠のTOBを競い合ったのか -
2020/10/01
#15 過疎地に店を出すほど利益が増える?小売業の物流完全自前化がもたらす多大な恩恵 -
2020/08/07
#14コロナ禍で過去最高益達成!流通を川上からコントロールする北海道のチェーンストアの強さ -
2020/04/23
#13 「不要不急の店」じゃない! 北海道の過疎地の生活を支えるホームセンター
この連載の一覧はこちら [18記事]
関連記事ランキング
- 2020-02-20#11 コープさっぽろ救済を通じ「日本の生協の危機」を回避した日本生協連の賭け
- 2019-07-19#4 ツルハには敢えて挑まず…アインとサツドラ、「ナンバー2企業」たちの流儀
- 2020-11-27#16 ニトリvsDCM-かつての「盟友」はなぜ島忠のTOBを競い合ったのか
- 2019-12-18#9 イオンという「外資」が、3極寡占化を促した
- 2020-10-01#15 過疎地に店を出すほど利益が増える?小売業の物流完全自前化がもたらす多大な恩恵
- 2022-02-15焦点:世界の供給網に薄明かり、コロナ前への回帰は期待薄
- 2022-08-05イオン九州、トライアル……九州小売13社が”横連携”する前代未聞の物流プロジェクト発足!
- 2024-01-092024年問題で切迫!小売業の物流改革のゆくえと成功事例とは
- 2024-01-10九州、北海道、首都圏 食品スーパー業界で進む物流連携の最新状況
- 2024-01-11鉄道輸送に事業者の帰り便活用…アークスの物流最適化戦略とは