アパレル不振の根源「作りすぎ」、作らなければ利益激減 この二律背反を解決する方法
3.成長著しいアジア市場に進出する
日本のアパレル産業は、ファーストリテイリングと良品計画を除いて、完全なドメスティック産業である。それでも衣料品で成長したいのなら、新市場にでてゆくしかない。もちろん、海外市場は激戦区だ。日本の「あ・うん」の商習慣は通用しないし、世界標準の業務フロー、英語を社内用語にするなど、今までアパレル企業が避けてきた業務を取り入れる必要がある。おそらく、多くの企業が大負けすることになるだろうが、世界企業は皆こうしたことを経験してきたわけだ。
供給が需要を上回る状況の中、例えば、「需要予測の精度向上」などは、根本的解決にはならないことはいうまでもない。百歩譲って、需要予測が極めて正確だとしても、それは、ほんの一握りの勝ち組企業だけにあてはまるソリューションだ。したがって、「作りすぎ」の問題解決は、論理的に上記3つのどれかということになる。
最後に余談になるが、最近私が手がける課題は、こうした「構造的課題」が多くなってきており、いわゆる「改善」の積み重ねでは解決できないものが多くなってきた。「構造的課題」とは、抜本的にビジネスモデルを変革しなければ、解法は見つからない課題だ。
衣料品ビジネスを手がけ、業績が悪化してきている企業は、是非ともしっかり原因追及をしてもらいたい。それが、経営上の失策の結果起きている課題なのか、それとも、時代の変化にさらされた「構造的な課題」なのかを。もし、後者だとすれば、それは「事業の再定義」が必要であり、いくら改善を積み重ねても効果はない。
「作りすぎ」の問題などは、まさにこのケースにあてはまり、企業は作りすぎを止めよ、と叫んでも、なんの効果もないし、個社ごとにマーチャンダイジングの適正化を繰り返しても、参入障壁の低いアパレルビジネスに、次々に新規参入者が現れ、果てしない破滅へのラットレースは続くことになる。
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プロフィール
河合 拓(事業再生コンサルタント/ターンアラウンドマネージャー)
ブランド再生、マーケティング戦略など実績多数。国内外のプライベートエクイティファンドに対しての投資アドバイザリ業務、事業評価(ビジネスデューディリジェンス)、事業提携交渉支援、M&A戦略、製品市場戦略など経験豊富。百貨店向けプライベートブランド開発では同社のPBを最高益につなげ、大手レストランチェーン、GMS再生などの実績も多数。東証一部上場企業の社外取締役(~2016年5月まで)
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