キーワードは“大きなD2C”とサステナブル…2021年のアパレル業界はこう変わる

河合 拓 (株式会社FRI & Company ltd..代表)
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2021年の百貨店業界は三階層にわかれる

百貨店は事業構造改革が不可避だ(写真はイメージ)

 百貨店は、三階層に変化が起きる。まず、地方百貨店の多くは姿を消すか業態を変化させることになる。レナウンが倒産し、オンワード樫山も数千店舗の撤退を行い三陽商会は依然低迷したままだ。百貨店アパレル御三家がこうなのだから、特に商権パワーのない地方百貨店はスペースが埋められない。

 二階層目の百貨店は、固定費を軽くするため、デベロッパーとして不動産価値をテコに生き残りをかける可能性が高い。例えば、東京の二子玉川に行けば、未来の縮図が見える。高島屋は、混んでいるのは食品街だけで百貨店売場は閑古鳥が鳴いている。しかし、南館の専門店街は人で賑わい対照的だ。これは、単なるMDの問題だけでかたづけられない。私は、あるCEOから、店頭から想起される当社の課題を言い当てて見ろといわれ、訪問した店舗空間の中から醸し出される、異なるMDの場所取り合戦のような乱雑なVMDから、「事業部別に再編された組織に適切なミッションとKPIを与えていない、ホールディングスに問題があるのではないか」と述べ、驚かれたことがある。店舗は本社の鏡なのだ。

  さらに歩いて、線路を渡り、ショッピングセンター(SC)である二子玉川ライズにゆけば、百貨店とSCの勝敗は明らかとなる。百貨店の従来型「平場」は限界を迎え、専門店街化する、つまり、MDミックスからテナントミックスに変化すると私は考えている。

  最後の一階層目について言えば、私は再三、百貨店は街の中心地にそびえ立つ城下町を形成する機能を持つべき、と書いた。新宿伊勢丹、名古屋駅の高島屋、大阪梅田阪急など、本来あるべき場所にある百貨店は、そのままの姿でその周辺の人々を豊かにするため、依然存在し続けるだろう。

  百貨店のデジタル化は、言われているほど百貨店の優勝劣敗に差をつけるものではないと私は思う。デジタル化は、生産性の低い小売業界が、生産性を高める上で避けて通れない道であり、それ以上でもそれ以下でもない。「復活の決定打」という論調は誤りであり、デジタルそのものに競争優位性はない。少なくともAmazonレベルの投資をしないのであれば、過度な期待は禁物である。百貨店の価値は、丁寧な接客と豊かな生活の提供を丁寧な接客で実現することだ。

  インバウンド需要が当面期待できないとなれば、百貨店の未来は、数の縮小、デベロッパーへの道、そして、一等地でのデジタル百貨店城下町形成の三階層で考えればその未来は見えやすい。さらに、デジタルSPAが進み、生産工場稼働を一定量に保つ必要がでてくるアパレル企業は、百貨店や総合スーパー(GMS)にプライベートブランド(PB)を提案しOEM供給する可能性が高い。この時点で、商社は完全に外されることになる。このように、立った一つの誤った判断が、その後の業界再編の絵図を大きく変えるということなのだ。本討議についての議論は何時でも応じるつもりでいる。戦略的判断の分岐点に立っている百貨店、アパレル、商社の方はいつでも呼んでいただきたい。

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記事執筆者

河合 拓 / 株式会社FRI & Company ltd.. 代表

株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)。The longreachgroup(投資ファンド)のマネジメントアドバイザを経て、最近はスタートアップ企業のIPO支援、DX戦略などアパレル産業以外に業務は拡大。会社のヴィジョンは小さな総合病院

著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「生き残るアパレル死ぬアパレル」「知らなきゃいけないアパレルの話」。メディア出演:「クローズアップ現代」「ABEMA TV」「海外向け衛星放送Bizbuzz Japan」「テレビ広島」「NHKニュース」。経済産業省有識者会議に出席し産業政策を提言。デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言

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