地域密着の最終兵器か? スーパーマーケットが「推し活」する理由

宮川耕平(日本食糧新聞社)
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新宿の地縁で「とうがらし」推しのダイエー

内藤とうがらしにフォーカスするなど地元色を打ち出すダイエー四谷荒木町店
内藤とうがらしにフォーカスするなど地元色を打ち出すダイエー四谷荒木町店

 ダイエーは、今年4月と11月に東京都新宿区内に2店舗を開設しました。両店で推したのは、区の名産品として打ち出す「内藤とうがらし」です。

 11月オープンの四谷荒木町店は、内藤とうがらしの関連品を25品導入したほか、総菜やベーカリー、生鮮各部門でも関連商品を開発していました。内藤とうがらし関連で売上げの1%を目指すと言います。

 品揃えにとどまらず、近隣に本社を置く理研ビタミンに働きかけ、同社の調味料等と内藤とうがらしを使ったメニューを開発、「レンジで内藤とうがらしのアラビアータ」といったレシピカードを作成しました。やはり近くにある成城中学校にも働きかけ、課外授業として生徒が考案した内藤とうがらしレシピの紹介ボードを店内に設置しました。地域の名産品を品揃えするのは地域密着の常套手段ですが、それをキーに地域活動にまで絡んでいくあたり、四谷荒木町店は「ダイエーの店」というだけでなく、「ダイエーの内藤とうがらしの店」と言いたくなるほどの推しぶりでした。

 東武ストア越谷店もダイエー四谷荒木町店も、当然ながら推し活だけで地域密着を図るわけではありません。駅構内の店である東武ストアは、即食中心のコンビニ的内周ゾーンと、スーパー的外周ゾーンのレイアウト構成で、駅利用客の利便性に対応しています。ダイエー四谷荒木町店も、2フロア構成の1階は即食対応、2階は素材対応で使い勝手を高めつつ、近隣の淀橋市場から直送する野菜コーナーを常設するなど地元対応を深掘りしています。

 それらをベースに、あえてチョイスした対象を推すことにより、この東武ストアは越谷の店、このダイエーは新宿の店という個性を強めています。新たに付け足した個性によって個店のファンが増えるとしたら、検討の余地がある工夫のように思われます。もっとも、地元の共感を得るには、何を推すのかについてのセンスやインパクトも重要です。

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