コンビニより強い!首都圏で増殖続ける、まいばすけっとの全貌!

阿部 幸治 (ダイヤモンド・チェーンストア編集長)
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“大型”の80坪タイプを実験中

──最近は、従来より一回り大きな80坪タイプの店舗も出店していますが、きっかけを教えていただけますか。

古澤 60坪タイプの店舗では、お客さまのニーズに十分応えられない商圏もあり、必要なラインロビングを追加していった結果、80坪になりました。当社は小型店なので、品揃えを絞り込んでいたのですが、毎週火曜日に全店から集めている「お客さまの声」では、「欲しい商品がない」という意見が多かった。つまり、お客さまのワンストップショッピング志向が根強いということですね。

 アイテム数は、60坪タイプは約2800SKUですが、80坪タイプは約3300~3400SKU。
 そんなに変わらないように思えますが、お客さまからは、「品揃えが豊富になった」と好評です。実際に、80坪タイプは集客力が高いので、60坪タイプの1.5倍の売上があります。
まだ実験段階ではありますが、郊外住宅地など周囲の競合店が少ない商圏では、今後も80坪タイプを増やしたいですね。

まいばすけっと
写真は80坪タイプのまいばすけっと要町駅西店

──80坪タイプでは、どんなアイテムを増やしたのですか。

古澤 力を入れたのはノンフーズで、ゴンドラ10本ほどに増やしました。既存店では、ほとんど取り扱っていなかったので、コンビニエンスストア(CVS)やドラッグストアが不戦勝の状態でした。とはいえ、取り扱うアイテムは限られるので、特色を出すように工夫しています。たとえば、ベビー用品では、「ベビーフード」「おしりふき」など、「ご家庭の買い置き分がなくなったときに当座をしのぐ」コンビニ需要に即応できるようにしました。ノンフーズは、粗利益率が高いので、商品回転を高めれば、利益にも貢献してくれます。

──食品で、拡充したカテゴリーはありますか。

古澤 生鮮3品です。とりわけ、農産に力を入れています。当社の店舗は「毎日来店」をめざしていますが、農産は、店頭で鮮度、季節感を訴求しやすく、来店頻度を高められるからです。また、60坪タイプでは、畜産・水産で計8尺しか売場がなかったのを、80坪タイプでは畜産9尺、水産3尺へと拡大しています。生鮮3品の売上構成比は現在、約15%ですが、20%まで増やしたいですね。そのほか、デリカも3尺×4本、冷凍食品もリーチインケースで10~13枚と、売場を広げています。加工食品では、健康飲料などニーズの高い健康関連を強化しています。

──増やしたカテゴリーの中で、どんなアイテムが人気でしたか。

古澤 都市部のお客さまは目が肥えておられるようで、目新しくて、品質が「ちょっと高め」、しかもリーズナブルなアイテムに、人気が集中しています。農産では、今春からスタートした産直品が大人気です。レタス、ホウレンソウ、トマトなど旬のアイテムを、毎月2~3品目ずつ増やしています。商品の回転が速くて、売価変更も少ないので、利益貢献度も高いアイテムです。今夏は、1房1500~2000円する「シャインマスカット」も好評でした。畜産では、昨年末に導入したすきやき用の牛肉がよく売れました。

既存出店エリアで2000店舗体制めざす

──プライベートブランド(PB)商品では、まいばすけっと発のトップバリュ商品の展開がついにスタートしました。

まいばすけっと発のトップバリュ商品が導入されている。個食用鍋物シリーズの「98円均一トッピング」だ

古澤 ええ。まいばすけっとの店舗数が増えてきたので、まいばすけっとのニーズに対応したPBを開発しやすくなったという背景があります。たとえば、低価格PBの「トップバリュ ベストプライス」の食パンもそうですし、「トップバリュ」の個食用鍋物シリーズとして、ちくわ麩など7~8SKUの「98円均一トッピング」もこの秋より店頭に並んでいます。さらにメーカーさんのご協力で、ナショナルブランド(NB)の当社専用ラインも、つくっていただけるようになりました。たとえば、沖縄フェア限定商品の「沖縄そば」はヒット商品となりました。

──イオングループのリソースを活用するかたちで、まいばすけっと専用の物流網も構築されています。

古澤 常温商品については、これまでイオングループの市川、川口、川崎のDC(在庫型物流センター)を活用していたのですが、10月から横浜に当社専用のDCも稼動させます。小型店専用の物流体制にしたほうが、運用効率がいいと考えたためです。
取引先の卸さんにも入居してもらい、横持ちの物流費を圧縮するねらいもあります。

──年100店舗の出店は当面、続けるのでしょうか。また、出店余地はありますか?

古澤 そのつもりです。年間100店舗以上を維持しながら、出店を拡大できればと考えています。

出店の余地は、東京23区と神奈川だけでも大きいと考えています。何せ大手3社のCVSだけでも、1万店あるといわれているくらいですから、現在3ケタの当社はまだまだ飽和にはほど遠いです。ドミナントでかつ直営で展開している強みから、自社店舗から上がってくるエリアの物件情報も多いですね。また最近では、新築マンションの1階のテナントとして、誘致されるケースもあります。東京23区と神奈川では、密度の濃い「超ドミナント化」をねらっていきます。

──チェーンオペレーションのさらなる効率化が望めますね。

古澤 ええ。物流効率はもちろんですが、全店が直営店舗なので、人材面でも今後柔軟な対応をしていくつもりです。たとえば、パート社員は自分の都合に合わせて、午前と午後で働く店を変えることもできるようにしたいですね。小型店らしい働き方だと思います。店舗がきわめて標準化されているため、違う店でも、すぐに売場に順応できるからこその取り組みだと思います。

──中期的な経営目標を教えてください。

古澤 売上高は年平均10%増、店舗数は2000店舗が当面の目標です。出店エリアはこれまでどおり、東京23区と神奈川が中心で、東京23区がメーンになるでしょう。近畿圏や中京圏への展開は、イオングループの地域子会社各社がそれぞれ小型店戦略を進めるため、われわれが直接出店することは考えていません。ただし、将来的には、中国など海外市場への進出も検討してみたいですね。

企業概要

設立 2011年
本部 神奈川県横浜市神奈川区
資本金 16億円
株主 イオン、イオンリテール
店舗数 828店舗(2019年9月27日時点)
売上高 1537億1000万円(19年3月期)
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記事執筆者

阿部 幸治 / ダイヤモンド・チェーンストア編集長

マーケティング会社で商品リニューアルプランを担当後、現ダイヤモンド・リテイルメディア入社。2011年よりダイヤモンド・ホームセンター編集長。18年よりダイヤモンド・チェーンストア編集長(現任)。19年よりダイヤモンド・チェーンストアオンライン編集長を兼務。マーケティング、海外情報、業態別の戦略等に精通。座右の銘は「初めて見た小売店は、取材依頼する」。マサチューセッツ州立大学経営管理修士(MBA)。趣味はNBA鑑賞と筋トレ

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