ZARAをヒントに在庫偏在による機会ロスを激減させる!ジュンの「マイクロフルフィルメント」

堀尾大悟
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「どこでも、いつでも、ストレスなく買える」配送システムとは?

MFSの仕組み
マイクロフルフィルメントシステムの仕組み

 長期的にファンを増やし、LTVを獲得するためには、顧客行動のオムニチャネル化に合わせて、実店舗でもECでも「どこでも、いつでも、ストレスなく買える」買い物体験の実現が不可欠だ、と中嶋氏は考えた。そのことは同時に、在庫効率を高め、総換金率(在庫総数に対する換金率)を引き上げることにもつながる。では、そのシステムをどう作るか。

 注目したのは、2018年にZARA六本木に出店したショールーム型店舗のポップアップストアからだ。そこでは、オンラインとオフライン全ての商品において、倉庫を持たずに店舗を最終在庫保管場所とする「分散型」の在庫管理システムが導入されていた。しかし、「ZARAのような大型店舗なら大量の在庫を抱えることができるが、ジュングループの直営店は店舗面積に限りがある。ZARAのモデルをそのまま転用することは困難」と断念した。

 ZARAと同様のコンセプトで、かつ小規模店舗でも顧客のあらゆるニーズに応えられるような在庫管理の仕組みができないか――約3年かけて検討を進めて導き出した答えが「物理在庫ではなく論理在庫でストックを拡張する」方法だ。

 「論理在庫」とは何か。

 一店舗で保管できる在庫点数の限界を、すべての店舗間で補い合うことで、購買機会のロスを極限まで減らそう、というものだ。そのコンセプトから生まれたのが、同社が202210月にリリースした「マイクロフルフィルメントシステム(以下「MFS」)」だ。

 アパレル業界において一般的に採用されている在庫の転送手段は「ルート便」だ。各店舗をルート便が巡回し、店舗から倉庫へと在庫を戻し、倉庫から在庫の移動先店舗や顧客へと発送する。上りと下りの両方のコストがかかるだけでなく、顧客に届けるまでのタイムラグも生じてしまう。

 そのルート便とは異なり、MFSが目指したのは、店舗同士で在庫を融通し合いながら、できるだけ顧客の居住地に近い店舗からダイレクトに発送するシステムだ。

 もしA店舗にほしい商品がない場合、

まず倉庫の在庫を確認し、在庫があれば倉庫から顧客に届ける。

もし倉庫にもなかったら、顧客の居住地になるべく近い店舗から在庫を引き当て、顧客に発送する。

 最も速く、かつ配送コストのかからない配送ルートを選択することで、顧客体験価値の向上と在庫効率の最適化を同時に達成しようとするものだ。

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