三陽商会「大江改革」の実態 繰り返す縮小均衡と連続赤字の先にある希望とは
2015年春夏シーズンを最後に英・バーバリーとのライセンス契約が終了して以降、22年2月期まで6期連続の営業赤字と深刻な経営不振に陥っている三陽商会。「火中の栗」を拾い、2020年に社長に就任した大江伸治氏によって断行されている、三陽商会の構造改革の実相を経営数字をもとに明らかにしたい。
極度のコンサル嫌い、三陽商会元社長の異変
2015年、ある新年会のパーティーの席だった。
当時、三陽商会の社長だった杉浦昌彦氏の前に座った私は、杉浦氏に「杉浦さん、私はECがとても得意です。貴社(三陽商会)のEC戦略をぜひまかせてください」と元気よくお伝えした。
その後、そんなやり取りは忘れられたと思っていた頃、当時専務で後に社長に就く岩田功氏から電話があった。「河合さん、ECが得意だとうちの杉浦から伺いました。一度いらしてくれませんか」と。
私は、やや首をかしげながら三陽商会に伺った。
当時百貨店を主軸としたバリューチェーンの中で、顧客データベースが貯められないという課題を三陽商会は持っていた。また、杉浦氏は業界を震撼させるだけの脅威の戦略を思いついていた。私に対して、その考えを具体化し、シナリオプランニングという手法をつかって将来の収支予測とROIの計算をするよう依頼してきた。
当時、杉浦氏は私をよく飲みにつれていってくれた。
その席で、「河合さん、行っておくが私はコンサルが大嫌いだ。以前、著名なコンサル会社Bにイギリス・バーバリーとの契約再締結の話を依頼したのだが、彼らは業務を知らないくせに威張りまくって酷い目にあった」と明かされた。
「河合さん。良いコンサルタントというのは、クライアントに寄り添いクライアントの気持ちを理解する人だ」と私に繰り返し助言もしてくれた。
そんなコンサル嫌いの杉浦氏が、いきなり私に依頼してきたのである。
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