東急グループが宅配事業に参入し「ホーム・コンビニエンスサービス」を開始

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 東京急行電鉄(東京都渋谷区、野本弘文社長)は、2012年6月1日より、新サービス「東急ベル」をスタートした。現在、沿線17市区を中心にサービスを提供中だ。東急グループをはじめとする事業者と提携し、商品・サービスを販売、家まで届ける。将来的には、あらゆる商品が自宅に届く究極の小売サービスをめざしており、同社は、利用者が自宅にいながらにして商品やサービスが手に入る「家ナカ」サービス、「ホーム・コンビニエンスサービス」と表現する。

 サービス開始時の6月1日に、まず導入されたのは、ネットスーパーサービスだ。楽天に出店している東急ストアのネットスーパー事業のうち、一部地域への配達を東急ベルの配達担当スタッフ「ベルキャスト」による配達に切り替えるかたちで開始した。「ベルキャスト」は、現在は10人が在籍。10月には30人に増やし、順次増員していく。顧客からの注文や相談も受ける、ご用聞きのような役目も果たす。現在、会員数と認知を向上すべく、ベルキャストが配達時に「東急ベル」のサービスを紹介、説明し、会員を募っている。

 「東急ベル」は、鉄道会社として、東急沿線を「選ばれる沿線」とするため、沿線に新しい付加価値をつくり出す一手として始まった。通信販売の利用が増加する状況下、盛況である宅配事業への参入というかたちをとっているが、ただ届けるだけでは、沿線の価値を高めるという目的を達することはできない。自宅まで赴くことで住民との接点を増やし、直接の声を聞きながら、沿線住民へのサービス向上を図ることを重視している。そのため、顧客とのコミュニケーションを濃密にできるよう、エリアの担当ベルキャストが長く継続できるように計画・調整中だ。

 サービス開始前に実証実験を行った際には、宅配サービスについて「待っていた」という受け止め方もあった。東急では、沿線に住む顧客に寄り添うサービスの展開が大切だと、あらためて認識したという。

 販売から宅配までが同一事業者でつながっていると、商品やサービスに関して、クレームも含め、店舗の延長のように顧客は意見を言いやすい。開始してから2週間ほどで、すでに品揃えやサービスなどへの有益な意見が届いている。顧客に寄り添うことで、生まれる強みは大いに生かしたいところだ。

 今後の取扱商品については、具体的な提供開始時期や品目は示されていないが、発表時のリリースによれば、デパチカ食品、地方名産品なども提供品に含まれ、グループの百貨店商品が、ベルキャストによって宅配される日も近いだろう。また、注文方法についても、ベルキャストの携帯する端末、コールセンターへの電話や会員のパソコンなど、多様化していく予定だ。

 6月4日には、住み替え、リフォーム、不動産の売買、賃貸などの「住まいと暮らしのコンシェルジュ」もサービス開始。介護や保育に関する相談も受ける、幅広いサービスであり、物の販売・配達にとどまらず「家ナカ」で幅広いサービスを提供する第一歩といえる。

 販売から宅配までがシステムとして一本につながる事業は、きめ細やかで迅速なサービスだ。ネットスーパーなどを含めた通販の隆盛に加え、店舗での買い物に宅配サービスを付加する動きも活発化している。これからの時代は、小売の在り方、地域サービスの在り方、また商圏の捉え方を柔軟に考えていく必要があるだろう。

記事執筆者

ダイヤモンド・リテイルメディア 流通マーケティング局 / 株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア

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