緊急報告 イオン入社歓迎の集い 岡田元也社長が語りかけたこと(1)

2011/04/11 08:36
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 統一地方選挙と全国各地で反原発の大規模デモがあった昨日の日曜日、イオン(千葉県/岡田元也社長)グループは、幕張メッセ(千葉県)にて、26社、618人の2011年度入社新入社員を集め、「イオン入社歓迎の集い」を開催した。

 東日本大震災から1カ月が経過――。被災エリアに展開する95%の店舗が再営業。その一方では、4社15人の従業員を失い、6人の安否が不明という悲しみも味わった。岡田元也社長は何を語りかけたか?(談:文責・千田直哉)

 

 東日本大震災が起こってから、1か月が経過した。

 この間、イオングループは全員で総力を挙げて闘ってきた。

 

 さきほど、イオン石巻ショッピングセンター(以下、石巻店/宮城県)やイオン気仙沼店(以下、気仙沼店/宮城県)の被災直後の状況と復興に向けてのビデオを観たと思う。

 自ら被災しながらも店舗の復旧に懸命に努めてくれた従業員。再開業前の店舗屋上で挨拶唱和をしながら思わず泣き出す従業員。売場の棚に溢れるばかりの商品が再び並んだことで歓喜されるお客様――。

 極限状況にある中での小売業の力を目に焼き付けて欲しい。

 これがイオンなのである。

 ビデオの中で懸命に動く先輩従業員は「イオンしていた」と言っていい。

 そして、ここに小売業の原点があり、イオンの原点がある。

 

 イオンでは小売業を①平和産業、②地域産業、③人間産業と定義づけている。この実現が何よりも大事であると考える。

 

 まず、ひとつめの①平和産業である。「平和な状態に戻していく力」が我々には必要だ。石巻店の再オープン(3月31日)では、大変多くのお客様の笑顔があった。おそらく多くのお客様にとっては被災以来、久しぶりの笑顔だったと想像できる。

 お客様は、豊富な商品をご覧になった、必要な商品をお求めになった。そんなホッと一息ついた瞬間にこぼれた笑顔だったのだろうと思う。

 これはイオンの前身である岡田屋がB29の爆撃で焦土にされた地に第2次大戦後、バラック店舗を再開させた時のことを彷彿させる。岡田屋はこの時、「焦土に開く」という広告を打った。当時のお客様は、その広告をご覧になって平和を実感された。

 小売業が平和産業であることのルーツだ。

 

 2つめは②地域産業である。イオンは東日本大震災に直面して地域に信頼される存在であったかどうかということだ。

 私は地域に信頼された、と確信している。

 実は、石巻店はシェルター(避難センター)として機能した。被災時、ショッピングセンター(SC)内には約6600人のお客様がいらっしゃった。全員が無事避難をして、そのうちの約2500人は帰る家をなくし、そのままSC内に暫くの間とどまることを余儀なくされ、最近、行政が用意した避難所へと移動されていったのだ。

 石巻店の再オープンの当日には隣接する中学校の卒業式がSCの屋根付き駐車場で開かれた。中学校が避難所に指定されたために式を実施するスペースがなかったためだ。

 またイオンは、東北エリアのほとんど自治体と防災協定、地域協定を締結しており、商品の緊急輸送の要請があったために、グループを挙げて最優先で手配した。「イオンと協定を結んでいて助かった」と多くの自治体から大きな信頼と評価を受けている。

 

 3つめは、③人間産業である。上記2つのことを可能にしたのは人間の力だ。先輩従業員たちの人間としての行動だ。

 情報が入ってこない。見るべきマニュアルがない。そんななかで、1人1人が本部や上司に頼ることなく、自分で判断してお客様の安全を最優先して、的確に誘導した結果、石巻店でも気仙沼店でもお客様を亡くすことを回避できた。

 誰彼から強いられるのではなく、自分でジャッジできる。しかも、半壊したような店舗でも諦めることなく、工夫と努力で商品を集め、店舗を開く、人間の力――。

 そういったことを先輩たちから学んでほしい。

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