水産業界、拭えぬ風評懸念=既に実害、「輸出半減」の声も―処理水放出

時事通信社
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 東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出が24日始まった。政府は、漁業者や消費者の不安払拭に全力を挙げ、福島県産水産物などの消費拡大を後押しする構えだ。ただ、風評被害の懸念は拭えず、「輸出が半減した」(ノリ販売店)など実害を訴える声も相次ぐ。東日本大震災と原発事故から回復途上にある水産業に、さらなる打撃となりかねない。

 処理水放出を控えた同日午前、東京・築地は多くの観光客でにぎわっていた。シラスを扱う業者は「2カ月前から福島県産を扱うのをやめた」と明かす。ノリ販売店の店員は、1カ月ほど前から中国や香港向けの輸出が滞り、「輸出額全体が半減した」と話す。

 海洋放出を受け、中国は日本産水産物の全面禁輸を打ち出した。全国漁業協同組合連合会(全漁連)の坂本雅信会長は24日、「既に発生している風評被害への可及的速やかな対応を強く求める」とのコメントを発表。西村康稔経済産業相と電話会談し、禁輸撤回を働き掛けるとともに風評被害防止に全力を尽くすよう申し入れた。

 岩手、宮城、福島、茨城各県産の水産物は「三陸・常磐もの」と呼ばれ、品質に定評がある。スーパーなどの小売業者は、これまで通り販売を継続する方針で、イオンやみやぎ生活協同組合(仙台市)は福島県産を対象にトリチウムの自主検査を実施し、消費者の安心感醸成を図る。

 ただ、2022年の福島県の沿岸漁業と海面養殖業による水揚げ量は、原発事故前の約2割にとどまっている。千葉県銚子市の水産加工会社幹部は、「(風評被害とは)原発事故後から闘っている。今起きたことではない」と表情を曇らせた。

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