ZホールディングスとLINEの経営統合ついに完了! 経営トップが語る今後の戦略と方針

ダイヤモンド・チェーンストア編集部 (株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア)
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質疑応答②サービスの統廃合はユーザー価値や利便性を考慮し慎重に進める

—―経営統合による相乗効果について。相互送客、ポイント付与などに留まるのか、もっと先に目指すものがあるのか。

川邊 既存のヤフーとLINEサービスには、それぞれ既に多くのユーザーがいるが、使う層も異なっている。ヤフーは40~50代の男性、LINEは比較的若い女性が多い。

 考えられるシナジーとしては、相互送客やポイントプログラムの統合など、既存サービスを前提としたものが1つあるだろう。また、ユーザーから見たときに、2つ存在していることに意味がないサービスは一つにまとめることもある。未来に向けては、ヤフーとLINE、それぞれの人間が一つになって新しいサービスを生活の中に提供していきたい。

出澤 先ほど、ペイメントでは統合を進めると発表した。一番大事なのは、ユーザーにとって本当に便利かどうかということ。ユーザー価値を考えながら、統合するのか、別サービスとして残すのかはよく考えていかなければならない。統合によって、議論ができる環境がようやく整ったので、これから進めていきたい。

—―世界レベルで不足しているエンジニア人材の獲得策について。

川邊 AI人材の獲得については、世界各国の大学の研究室にいるような優秀な人材を招聘したりすることも増えると思う。口説き文句は「実世界であなたの研究は役に立つ」ということ。加えて、マルチビッグデータを活用することができる、様々なサービスから集めたデータを活用したAIをつくることができるという点も、魅力になるはずだ。

出澤 世界に向けてチャレンジすることを宣言し、やり続け、結果が出てくるというサイクルを回し続けることが魅力につながると思う。その意味で、今回の統合自体もチャレンジの1つだ。こういった姿勢が、企業文化やサービスに滲み出てくることで人が集まるきっかけになればと思う。

—―海外事業に関しての目標は。

川邊 ヤフーの場合、日本だけのライセンスだったため海外という考えがなかった。もっと海外の人々にサービスを使ってもらいたいと考え、ホールディングス化・海外進出の道をつくった。ラインは日本の中でも数少ない海外進出に成功している会社。まずはラインの力を借りて進出していこうという考え。

もう一つは、ソフトバンクビジョンファンドとのユニコーンとの連携。伝統的に我々はタイムマシン経営が得意である。PayPayもインドのモデルをよく学んだもの。AIを中心にしたユニコーンファンドの事業を日本に持ってきたり、全世界で一気にサービスを広げる手伝いも増やしていきたいと思っている。

出澤 2社で新しいことをやろうという文脈においては、一気にグローバルを目指したプロダクトを作っていきたい。

—―ガバナンスに関して。「対等」を重視した組織になっているが、対立したときに意思決定ができるのかという不安はないか。

川邊 対等経営統合の精神に基づいたガバナンスになっている。それぞれの文化を尊重しあって、手を取り合って一つにしていくためには、対等の精神が良いという思いでこうなった。

 もちろん、現実には乗り越えなくてはならない問題は多いと思う。そこを乗り越えるための共同CEO制度だと思っているし、決めきれなければ取締役会でしっかり決めていくということになると思う。日常の業務においては、私が最終的な決定権を持って進めていくことになると思う。

—―統合発表から今日までの約1年4ヶ月を通じて、ライバルからパートナーに変わってた中、どのような発見がお互いにあったか。

川邊 この1年4ヶ月はとても長かった。統合作業も進めながら、コロナ禍で困っている目の前のユーザーのためにも時間を費やしてきた。そのなかで私が感じたのは、LINEには社会課題の解決に突っ込む力があるということ。

 例えば、「ダイヤモンドプリンセス」号の中にiPadやスマホを持ち込んで、LINEドクターのサービスを提供した。もう1つは、LINEを介した全国一斉健康アンケート。ヤフーでも様々な協力を国に対して行ったが、LINEの持つ突破力やユーザーとの強力な関係性は素晴らしいと思っている。そこが、新たなデータの可能性を解き放つと考えている。上記のような取り組みで得たデータはヤフーにはないもの。ますます今後一緒にやっていくことについて期待している。

出澤 発見ということでは私は3つある。1つは、ヤフーは大企業でありながらスピードが早い。意思決定の早さ、物事を進めるスピードは見習わなければならないと感じた。また、どうやって社員やマネージャーが気持ちを通じさせるか、コミュニケーションのマネジメントの設計がとてもうまくなされている。1on1ミーティングの仕方一つとっても優れているし、役員間の情報共有の仕方、メンタリング、コーチングの仕組みなども最先端で、LINEではやりたくてもできなかったことをいち早く取り入れている。最後に、社員の皆さんのパッションが強さだ。

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記事執筆者

ダイヤモンド・チェーンストア編集部 / 株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア

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