教えて本多利範さん!「ECの浸透で流通の垣根がなくなる時代が来る」

本多利範
Pocket

流通各社は食品ECを強化

 生活者にとってECを使うメリットとは何だろうか。自宅で買物ができるため「時間が節約できる」、重量物、かさ張る商品が自宅まで届くので「荷運びが楽」という声が多い。ほかにも多くの商品の中から欲しいものを選べて価格比較も容易という「利便性」、また近くの店では手に入らない商品を買えるという点にも魅力を感じているようだ。

 次はデメリットについてだ。前述の通り、自分の目で「鮮度を確認できない」のほか、「注文から届くまで時間がかかる」のように、手に入るまで時間がかかるところに不便さを感じる人もいる。一方、ECを運営する側からすれば、最も大きいのは単価が低く、物流拠点への投資など「利益とコスト」のバランスが悪いことだ。

 メリット、デメリットはあるが、ECは拡大市場であり、ネットスーパーに力を入れる流通企業が目立つ。大手ではセブン&アイ・ホールディングスの「イトーヨーカドーネットスーパー」、イオンの「おうちでイオン イオンネットスーパー」、西友の「Rakuten Seiyu ネットスーパー」、イオングループの「Green Beans」などだ。ほかにも地方チェーン企業の参入も相次ぐ。

 さらに大手を中心に、積極的な投資が見られ、各地で大型の物流配送拠点が増えている。

 センター拠点型のほか、店舗拠点型でサービスを提供する企業も多い。たとえばイオンリテールは24年1月現在、関東、北陸信越、東海、近畿、中四国の280店舗で展開している。ライフコーポレーションについては、受注可能件数を拡大させるべく、店舗併設型ストアの設置にも乗り出している。

 小商圏型のビジネスで支持を得るコンビニエンスストア(コンビニ)にも動きがある。「セブン-イレブン」は、地域限定で店舗近隣に 30分で届ける「7NOW」を稼働。「セブン-イレブン」の商品を最短30分で届けるというものだ。現在、北海道、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、広島県の一部で対応するが、今後もエリアを拡大する方針という。

 現状、食品のEC化率が低い日本だが、今後、ネットスーパーやネット通販、CVSの配達サービスが浸透する流れは強まる。他方、食品を強化するリアル店舗のドラッグストア、また「Ùber Eats」「出前館」といったデリバリーサービスも生活者の主な選択肢になっていく。

 日本ではそれらEC、リアル店舗、各種サービスの垣根がなくなりつつある。生活者はその中から、生活に必要な商品をその時々の都合に合わせて選ぶ時代が来るだろう。

本多利範さんの書籍「お客さまの喜びと働く喜びを両立する商売の基本」

商売の基本_書影本多 利範 著
定価:1650円(本体1500円+税10%)
発行年月:2022年03月
ページ数:276
ISBN:9784478090787

詳細はこちら

1 2
© 2024 by Diamond Retail Media

興味のあるジャンルや業態を選択いただければ
DCSオンライントップページにおすすめの記事が表示されます。

ジャンル
業態