TOKYO BASEがZ世代から支持される理由と東京がショールーム都市になる衝撃
アパレル産業の次の10年の消費を担うZ世代を囲い込むため、産業界は、あらん限りの知恵を絞り分析を試みているが、私は強い違和感を感じている。その一例が、メディアが「アパレル産業の起死回生の一撃」として盛んに報じている、「ジェンダーレスファッション」だ。
今回は、Z世代にフォーカスを当て、いかに世の中がこのセグメントに対してチグハグな見方をしているかということ、そして、仮にZ世代を正しく追いかけたとしても、悲惨な結果に落ちるということ、さらに大きく業界を鳥瞰してみれば、東京はショールーム化されるという大胆な予想を展開する。批判は自由だが、ぜひしっかり読み込んでいただきたい。
ジェンダーレスファッションは本当に拡大しているのか?
まずは、「ジェンダーレスファッション」について考える。
私の分析では、Z世代はそれほど難しい消費をしているわけでない。単に、我々グレイヘアー(40代以上を暫定的にこのように呼ぶ)と違い、自分にとって経済的に損か得かという「生活ROI」で消費判断し、私たちが作ってきた「大人になれば、結婚し、クルマを買って家を買う」という「常識」にとらわれない合理的発想でものごとを考えているだけなのだ。デジタルネイティブと呼ばれ、スマホを体の一部のように使い、あらゆる情報の洪水を苦も無く取り込み、自分にとって最も共感できる情報で伝統的価値観より合理的価値観で消費をする。私はこのようにZ世代を分析している。もっといえば「ジェンダーレスファッション」など存在しないというのが私の立場だ。
アパレル業界に限らず、各産業界はこれからの10年を生き抜くため、Z世代と呼ばれる10代から20代の今後10年の消費を取り込もうと必死になっているが、私は、強い違和感を感じている。
「ジェンダーレスファッション」に話を戻すと、どのメディアも「ジェンダーレスファッション」は、「サステイナブルファッション」と同様、Z世代に支持されており急拡大しているという。しかし、その実態は、彼女たち、彼らたちは、「自分に似合う服、自分がやりたい着こなし」に合えば、それがメンズ製品だろうがレディース製品だろうが関係ないと考えているだけなのだ。男性専用、女性専用などという枠組みを飛び越えて消費したいだけで、別に「中間セグメント」を求めているわけではない
私も含めた、グレイヘアたちは、「女性」「男性」、そして「3番目」と区分し、その「3番目」を「ジェンダーレス」と考えている。だが、テレビの報道番組のインタビュー映像を観ても、彼女たち、彼らは、むしろ、そのような区分そのものを取っ払い、自由に好きな服を買わせて欲しい、といっているようにしか聞こえなかった。
「区分をとりはらう」と「区分をつくる」の何が違うのかという反論がきそうだ。ここは微妙な違いだが、英語で言えば「Genderless」(性差がない)と「Non-genderlized」(性差がなくなってきている)という造語で説明すればおわかりだろうか。もっと単純ににいえば、このような認識齟齬は、前者は「ジェンダーレス」というZ世代が望んでいないブランドを登場させてしまうが、後者は、店舗内VMDを「メンズ」や「レディース」という区分自体をとりさるかの違いとなり、後に企業戦略に大きな違いをもたらすだろうと思う。
Z世代の「ジェンダーレス」を尊重するなら、まず「メンズ」と「レディース」という区分をとりさり、消費者に自由に購買できるような店作りをすればよいと私は思う。実際、私は体がきゃしゃでレディースのLを買う場合があるし、私の妻もダボッとした服を買うためメンズを買っている。両者の微妙な解釈の違いは、企業を全く違う戦略に誘うのである。
早くも3刷!河合拓氏の新刊
「生き残るアパレル 死ぬアパレル」好評発売中!
アパレル、小売、企業再建に携わる人の新しい教科書!購入は下記リンクから。
河合拓のアパレル改造論2021 の新着記事
-
2022/01/04
Z世代の衝撃#4 Z世代を追えば敗北必至!取るべきトーキョー・ショールーム・シティ戦略とは -
2021/12/28
Z世代の衝撃#3 既存アパレルが古着を売っても失敗する明確な理由とは -
2021/12/22
インフルエンサー・プラットフォーマー「Tokyo girls market」驚異の戦略とは -
2021/12/21
プラットフォーマー起因の歪な過剰生産が生み出す巨大ビジネス、SheinとShoichi -
2021/12/14
Z世代の衝撃#1 ライブコマースで「インフルエンサー・マーケティング」が失敗する衝撃的理由 -
2021/12/07
TOKYO BASEがZ世代から支持される理由と東京がショールーム都市になる衝撃
この連載の一覧はこちら [56記事]
ファーストリテイリング(ユニクロ)の記事ランキング
- 2024-11-13値上げしたのにアパレル業界が利益に結び付かない2つの理由
- 2024-11-07同じ低価格なのに…GUがしまむらやワークマンと「競合」しない決定的な理由_過去反響シリーズ
- 2024-01-02勝ち組はSPAではなく「無在庫型」へ 2024年のアパレル、5つの受け入れ難い真実とは
- 2023-08-28ユニクロと東レとのサステナブルな関係から生まれたリサイクルダウン
- 2021-05-04大丸、三越伊勢丹…誰も語れない百貨店分析 政府の施策が百貨店を殺す「本質的理由」
- 2024-09-03アローズにビームス…セレクトショップの未来とめざすべき新ビジネスとは
- 2022-05-03ユニクロ独走の秘密は販管費にあるのに、原価削減を繰り返すアパレルの実態とは
- 2024-02-21ファストリ業績絶好調も…日本の大衆から乖離するユニクロはどこへ行く?
- 2024-09-27ユニクロが中間価格帯になったことに気づかない茹でガエル産業アパレルの悲劇_過去反響シリーズ
- 2021-11-16「ラルフローレン」と「ユニクロ」が同じである理由とZ世代に対する誤解が生む悲劇
関連記事ランキング
- 2024-10-29ライザップ傘下の夢展望、Temu効果で株価高騰も拭えない「不安」とは
- 2024-11-05ユニクロがZOZOに出店しない当然の理由と今後のECモールとの付き合い方
- 2024-11-12アパレルは「個人売買」「古着」が、今後驚くほど拡大する理由
- 2024-11-19ユニクロ、開始から7年で明らかになった有明プロジェクトのいまとすごい成果
- 2024-11-13値上げしたのにアパレル業界が利益に結び付かない2つの理由
- 2024-11-07同じ低価格なのに…GUがしまむらやワークマンと「競合」しない決定的な理由_過去反響シリーズ
- 2024-09-17ゴールドウイン、脱ザ・ノース・フェイス依存めざす理由と新戦略の評価
- 2024-10-22事業再生、「自ら課題解決する」現場に変えるための“生々しい”ノウハウとは
- 2021-11-23ついに最終章!ユニクロのプレミアムブランド「+J」とは結局何だったのか?
- 2023-08-08EC時代にスクロールとベルーナだけ好調 生き残るカタログ通販、死ぬカタログ通販