イオンの入社式で岡田元也社長が話したこと(上)

2013/04/02 00:00
Pocket

 イオン(千葉県/岡田元也社長)は、4月1日、「イオン入社歓迎の集い」を開いた(@幕張メッセ)。イオングループの国内46社の新入社員約2500人に加え、中国・アセアン各国23社の新入社員代表者100人を中継で結んで参加した。岡田元也社長は何を語ったか?
今日、明日2回に分けてお届けする(談:文責・千田直哉)

 

 新入社員のみなさん。入社おめでとうございます。

 みなさんは、各事業会社に入社した訳だが、同時にイオングループに入社したことになる。両方の立派な一員になることを期待する。

 

 さて、イオングループは、連結売上高5兆6000億円(2012年度)に達する一大流通集団である。これにピーコックストア(売上高1126億円〈2011年度〉)やダイエーグループ(同8694億円〈同〉)も加わることになるので、2013年度は6兆円を突破する。

 グループの食品売上高は約3兆円に達し、日本市場では約10%のシェアを持つ。

 資本金は1900億円以上、従業員数は約35万人という日本最大、アジア最大の流通グループだ。

 

 ただ大規模な企業体に入社したからと言って手放しに喜んでいてはいけない。留意しなければいけないのは、スケールデメリットが出ないようにすることだ。

 

 一般的に企業規模が拡大すると、お客様との直接的な接触がなくなり、向きあったり、理解したりすることがしにくくなる。社内の管理や根回しに時間は取られがちだ。

 または、失敗をしないことだけを重視するがあまり、お客様が望んでいることと真逆のことをしてしまう。ひたすらリスクを恐れ、それを避けることばかり考えるようになる。

 そんなことに気を付けなければいけない。

 

 大企業でありながらも、小企業、ベンチャー企業然と行動できるようでなければならないということだ。イオンは、考えを同じにする何人かがお金を出し合って事業を行う原初的な形態――ベンチャー企業の大集合体でありたい。

 

 だから今後も組織は小さく割っていく。例えばイオンリテール(千葉県/梅本和典社長)は売上高2兆円超の企業だが将来的には地域ごとに分社化し、少人数で完結してスピード感をもって動ける組織にしたい。

 

 具体的に例を挙げるなら、地域の小さな製造者を開拓し、取引し、大事にして、商品を地域のお客様に販売する。“地産地消”の遂行だ。

 それが進むと、その地域で探した良い商品を他の地域で販売する“地産他消”になる。さらに進めば、そこの産物を海外で販売する“地産外消”だ。

 

 そのように各エリアの特色のある商品を大事にするとともに、一方では、自分たちのバックにはグループとしてアジア全体に広がるネットワークや従業員がいることを認識すれば、実に様々なことができるはずだ。

 

 また、グループとしてのシナジーを追求するとともにグループ内では、みなさん同士の競争を重視していきたい。

 

 そして全てにおいて、「多様性」(国籍、性別、学歴など)と「一貫性」という相矛盾するテーマを追求したい。

 「多様性」とは違う人や違う地域を容認することだ。

 人間が全体主義のように同じように考え、行動するというのは一見効率良く見えるが、そういう組織は往々にして滅びやすいものだ。

 

 だから「多様性」を備えることが、大型化することから生じる均質化の危険から身を守る方法だと考えている。

 気をつけなければいけないのは、「自分は他人とは違う」と考えるだけでは、「多様性」の確保にはならないということだ。多様であるためには、多様に考えて、多様に意見を言わなければいけない。黙っているのであれば、一律均一な人たちの集まりと何ら変わらない。

 すなわち、積極的な発言が必要ということだ。だが、自分の意見を言うにはいささか勇気がいる。自分との戦いに負けてはいけない。それだけはお願いしたい。

 

 イオングループに入社したみなさんには、会社員ではなく、商人であってもらいたい。

 配属された職場が「店舗」「通販」「サービス」「金融」「人事」「総務」「財務」「経理」「IT」「物流」…どの部門であったとしても、全員が商人であってもらいたい。

 「お客様のために自分たちは何をすべきなのか? 何をしなければいけないのか?」、それをひたすら考え続けてほしい。

 

 イオンの誕生は1758年だ。初代岡田惣左衛門が太物・小間物商を四日市で創業。当時の屋号は篠原屋であり、創業250年を超える。

 

 千葉県幕張の本社内には、イオンの歴史館が拡大リニューアルオープンしているので、研修期間中にぜひ見て学んでもらいたい。

 

 見学のポイントは2つある。

 

 ひとつは「お客様第一」の歴史である。先輩たちは、その時その時、お客様のために何をしてきたのか。そしていかなる成果が上がり、今日、どのように継承されているのか。「お客様第一」の歴史を学んでもらいたい。

 

 2つ目は、呉服行商の岡田屋が家業から企業へどのような形で推移していったのかということだ。株式会社化したのは1925年。なぜ、株式会社化をしなければならなかったのか?株式会社化することで何を得たのか? その産業化への歴史だ。

 

 たとえば、イオンのプライベートブランド(PB)であるトップバリュだ。1974年、メーカー側の一方的なカップラーメンの値上げに抗議し、独自商品の開発に着手。フォーク添付を省いた「ジェーカップ」を85円という低価格で発売したことが始まりだ。

  「なぜ、PBが必要だったのか? そしてPBがなぜ、今、世の中にこれほど増えているのか?」

 

 この2つのポイントを軸にして歴史を振り返れば、理解しやすいはずだ。
 

© 2024 by Diamond Retail Media

興味のあるジャンルや業態を選択いただければ
DCSオンライントップページにおすすめの記事が表示されます。

ジャンル
業態